小山清茂

小山清茂（こやま きよしげ）

プロフィール

小山清茂は、1914年1月15日に長野県更級郡信里村（現在の長野市）で生まれ、2009年6月6日に95歳で亡くなった日本の作曲家です。彼の作品は、神楽や祭囃子など日本の伝統音楽をモチーフにしており、日本的な情緒と温かみのある作風が特徴です。

生い立ちと音楽との出会い

小山の生家は、山深い農村にあり、幼少期には西洋音楽に触れる機会はほとんどありませんでした。しかし、その代わりに、村の祭礼音楽や童歌、村人たちが歌う民謡など、日本の伝統的な音楽に囲まれて育ちました。特に小学校高学年の頃に、近隣の町で行われた陸軍戸山学校軍楽隊の演奏を聴いたことが、彼の音楽観に大きな影響を与えたとされています。彼はこの時の体験を「まるで夢のようだった」と語っています。

旧制長野中学校（現在の長野県長野高等学校）に進学すると、ハーモニカ合奏や短歌に熱中しました。1933年に長野師範学校（現在の信州大学教育学部）を卒業後、長野県内の学校で教員として働く傍ら、作曲の勉強を始めました。

作曲家としての活動

1939年、小山は上京し、安部幸明に作曲を師事しました。1941年には、東京都内の小学校に勤務する傍ら、東京都教員管弦楽団でフルート奏者を務め、指揮者の渡邊浦人と親交を深めました。このオーケストラでの経験が、彼の後の作曲活動に大きな影響を与えました。1946年、第14回音楽コンクールに「管弦楽のための信濃囃子」を出品し、第1位を受賞。この作品は、故郷の秋祭りの神楽を題材にしたもので、彼のデビュー作とも言える作品です。1950年には、渡邊浦人らと「白涛会」を、1956年には深井史郎らと「新音楽の会」を結成。これらの音楽グループを通して、日本的な音楽の創造を追求しました。

1955年に小学校教員を退職した後は、1969年から神戸山手女子短期大学の教授を務め、1981年には尚美音楽短期大学作曲科の教授に就任しました。1971年には、中西覚と共に「たにしの会」を設立し、日本の旋法や和声の理論体系を研究しました。また、1986年には国立音楽大学音楽研究所に奉職しました。

1985年、芥川也寸志と新交響楽団による「日本の交響作品展9 小山清茂」が開催され、彼の作品が広く紹介されました。

代表作

小山は、舞台作品、管弦楽曲、吹奏楽曲、室内楽など、幅広いジャンルで数多くの作品を残しました。

舞台作品
音楽劇「楢山節考」（1959年）
バレエ「かぐや姫」（1962年）
舞踊劇「妄執の火」（1963年）
オペラ「山城国一揆」（1965年）
舞踊曲「最終の祭祀（いやはての祭）」（1969年）
オペラ「山椒大夫」（1972年）
オペラ噺「こんにゃく問答」（1974年）

管弦楽曲
管弦楽のための信濃囃子（1946年）
管弦楽のための木挽歌（1957年）
交響組曲「能面」（1959年）
交響詩「山の歳時記」（1961年）
アンサンブルのための日本民謡集（1963年）
管弦楽のための鄙歌（1976年〜1988年）

吹奏楽曲
イングリッシュ・ホルンと吹奏楽のための音楽（1969年）
吹奏楽のための木挽歌（1970年）
吹奏楽のための花祭り（1979年）

室内楽曲
和楽器のための四重奏曲（1962年,1968年）
箏と和楽器による「うぶすな」（1962年）
和楽器のための三重奏曲、五重奏曲（1973年）
アンサンブルのための「わらべ唄」（1983年）

声楽曲
歌曲「おくめ」「おきく」
混声合唱のための「誕生祭」（1961年）
混声合唱とテープのための「天地創成」（1970年）
その他、多数の校歌

特に、「管弦楽のための木挽歌」は、小学校の教科書にも掲載されたことがあるため、多くの日本人に親しまれています。

晩年と死

小山清茂は、2009年6月6日に東京都内の自宅で老衰のため亡くなりました。95歳でした。彼は、日本の伝統音楽を基盤に、独自の音楽世界を築き上げ、日本の音楽文化に大きな貢献をしました。

著書

『日本のピアノ――日本和声によるピアノの手ほどき』
『田螺のうたが聞こえる : 小山清茂著作集』
『日本和声〜そのしくみと編・作曲へのアプローチ　日本の音を求めて』(中西覚共著)
* 『日本の響きをつくる』

これらの著書は、彼の音楽理論や思想を知る上で貴重な資料となっています。

小山清茂の作品は、今もなお多くの人々に愛され、演奏され続けています。

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