小山田有重

小山田有重の詳細

小山田有重（おやまだ ありしげ）は、平安時代末期に活躍した武蔵国の豪族であり、秩父氏の一族に属していました。彼の父は秩父重弘とされており、兄には畠山重能がいます。有重は、武蔵国の多摩郡から都筑郡にまたがる小山田保を支配し、さらに武蔵小山田荘の領主として小山田別当を名乗るようになりました。小山田氏の祖としての地位を確立した彼の子孫には、稲毛氏や榛谷氏が分派したとされています。

生涯を振り返る

有重の活動が記録に残るのは、院政期の頃からです。この時期、彼の動向については多くのことが不明ですが、久寿2年（1155年）に発生した大蔵合戦は彼にとっての重要な出来事でした。この合戦は秩父一族間の主導権争いそのものであり、源義朝の長男、義平が義賢と共に、叔父である秩父重隆を討った戦いとして記録されています。有重とその兄重能は、義朝方に属し、勢力拡大を目指していたことが窺えます。

有重の名前が史料に初めて登場するのは『保元物語』においてで、保元元年（1156年）の保元の乱の際に、源為朝が父の為義に対して、有重や畠山重能らと共に関東に抵抗する提案をしたという記録があります。このことから、有重は源義朝に近い立場にあったことが強調されています。また、保元の乱以前には、義朝と藤原信頼が武蔵稲毛荘の立荘に関与した際も、重能と有重兄弟が何らかの形で関与していたと見られています。

平治元年（1159年）は、平治の乱によって源義朝と藤原信頼が平氏に敗れ、その結果、重能と有重兄弟が平氏に属することになります。この頃の彼らの動向については、『平家物語』や『愚管抄』において平氏の郎等として言及されており、平氏方へ帰属したことがわかります。

治承4年（1180年）に以仁王が挙兵した際、有重は重能と共に大番役として京都に在住しており、平家の忠実な家人として各地で戦闘に参加しました。8月には源頼朝が挙兵し、同年10月には秩父氏が頼朝に帰依したことが記録されています。

『吾妻鏡』には、当時の状況が語られており、源氏方に付く一族がいたため、平氏の平宗盛に捕えられたものの、平貞能の取り成しにより東国へ帰国したという出来事が記録されています。また、『平家物語』では一門が都落ちする際に、平知盛が兄弟に帰郷を促したとしています。

元暦元年（1184年）には、源頼朝による一条忠頼の謀殺事件に関与します。忠頼を討つ役目の工藤祐経が動揺している様子を見て、有重はその場を離れ、年長者としての慎みを示しました。この時、息子たちに給仕の作法を教えている姿も記録されていますが、その後の史料には有重の名は出てこなくなり、世代交代が進んでいったと見られています。

現在の有重の足跡

東京都町田市下小山田町には有重の館跡とされる大泉寺が存在し、その境内には有重と子の行重、また南北朝期の高家の三基の宝篋印塔があります。このように、有重の足跡は現代に残されており、彼の歴史的な存在が次世代に語り継がれています。

小山田有重の生涯は、平安時代末期の複雑な政治情勢を背景に展開され、彼の家系と共に日本の歴史に大きな影響を及ぼしました。

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