小沼 (赤城山)

小沼

小沼（この、こぬま）は、群馬県前橋市富士見町赤城山に位置する、赤城山を代表する山頂部の湖沼の一つです。「赤城小沼」とも称されます。

地理的特徴と成因

赤城山の山頂域、大沼から南東へ約2キロメートル離れた場所にあり、標高1674メートルの地蔵岳と1579メートルの長七郎山に囲まれています。この湖は、太古の小沼火山における爆発的噴火によって形成された火口の底に水が溜まって誕生した「爆裂火口湖」です。赤城山の山頂カルデラができた後、地蔵岳よりも高かったとされる小沼火山が大噴火を起こし、その際にできた窪地が現在の小沼となりました。近隣にある血の池も、同じ時期に形成された爆裂火口の跡と考えられています。

湖面標高は1470メートル。形状はほぼ円形で、直径は約700メートル、面積は8ヘクタール、周囲は約981メートルです。水深は季節によって変動し、5月頃に最大約7メートルとなりますが、7月には最小約3メートル程度になります。水の透明度が高く、貧栄養湖の特徴を示しています。

季節による変化も顕著です。冬期は12月中旬頃から湖面が凍結し、かつてはスケートリンクや氷上サーキットとしても利用された歴史があります。氷は5月上旬頃に解け始め、夏季には水温がセ氏20度を超えることもあります。

水源としての役割と文化

小沼は粕川の源流の一つであり、湖の南岸に設置されたコンクリート製の水門を通じて流量が調整され、山麓へと流れ下ります。この流れは、特に大正用水や群馬用水といった大規模な灌漑施設が整備される以前は、周辺地域の農業用水として極めて重要な役割を担っていました。現在も補助的な水源として利用されています。

また、信仰の対象ともなっており、湖の南岸には天竜弁財天が祀られています。さらに、赤城大明神（三所明神）の一所もこの地に祀られているとされています。

周辺環境と自然

小沼の周辺は森林に囲まれ、湖岸の一部には白い砂礫が見られます。周囲には商業施設などはなく、非常に静かで落ち着いた環境が保たれています。湖畔を巡る散策路があり、徒歩で30分から40分程度で一周できます。道の一部は石畳が敷かれ、趣があります。

周辺の自然植生も豊かで、春から夏にかけてはレンゲツツジ、ミツバツツジ、トウゴクミツバツツジといった様々なツツジ類をはじめ、ダケカンバ、コバギボウシ、オニアザミ、シロヤシオ、サラサドウダン（ベニサラサドウダン）などの多様な植物を観察することができます。湖にはモツゴなどの魚類が生息しています。

伝承

小沼には古くから伝わる伝説があります。赤堀の長者であった赤堀道元が赤城明神に祈願して授かった娘が、16歳の時に小沼に入水し、この湖の主となったというものです。粕川の流れは、娘の亡骸を探そうとした人々が山を切り崩して水を流した結果できたものだとも語り継がれています。

交通アクセス

公共交通機関を利用する場合、JR両毛線前橋駅から路線バスで赤城山ビジターセンターまで約70分、そこから徒歩で約30分程度で小沼に到着します。
自家用車の場合は、最寄りの駐車場として小沼駐車場が利用できます。ただし、バイオトイレの容量制限などから、大型車の駐車や団体でのトイレ利用には制限がある点に注意が必要です。

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