山下臨港線プロムナード

山下臨港線プロムナードとは

山下臨港線プロムナードは、神奈川県横浜市中区に位置する、新港地区と山下公園を結ぶ全長約500メートルの遊歩道です。このプロムナードは、かつて東海道本線の貨物支線として活躍した山下臨港線の廃線跡を再利用して整備されました。港湾環境整備施設（港湾緑地）として、市民や観光客に親しまれています。

本記事では、このプロムナードの歴史的背景や、かつて存在した山下臨港線、そして横浜博覧会臨港線についても詳しく解説します。貨物支線としての詳細については、「高島線」の記事も参照してください。

プロムナードの概要

プロムナードは、横浜税関付近から大さん橋入口を経由し、山下公園西端へと続いています。その特徴は、大半の部分が線路の高架橋を再利用して造られている点です。そのため、高架となっている部分が多く、大さん橋や山下公園付近では、階段やスロープを使って出入りすることになります。

このプロムナードは、2002年に設定された散策コース「開港の道」の一部としても位置づけられています。このコースは、桜木町駅から港の見える丘公園を結んでおり、プロムナードはその中間地点にあたります。

プロムナードの歴史

山下臨港線は、1965年（昭和40年）7月1日に、国鉄東海道本線の横浜港駅～山下埠頭駅間2.1kmが開通したことから始まりました。当初は非電化の単線でした。

1982年: 横浜港駅が横浜港信号場に降格。
1986年: 横浜港信号場～山下埠頭駅間が廃止（ただし、麦芽輸送は継続）。
1987年: 麦芽輸送が完全に廃止。
1989年: 横浜博覧会協会臨港線として、日本丸駅～山下公園駅間で旅客列車が運行（期間限定）。
2002年: 山下臨港線プロムナードが完成。

山下臨港線の開通までの経緯

1960年代、山下埠頭の造成に伴い、既存の国鉄高島線から山下埠頭までの貨物輸送ルートが必要となりました。しかし、線路が山下公園内を通る計画に対し、景観を損ねるという理由で地元から反対の声が上がりました。そのため、公園の道路側に景観に配慮した高架橋を建設することになり、1961年から工事が開始、1965年に完成しました。

この路線は、東海道本線の貨物支線として機能しましたが、様々な通称で呼ばれました（山下埠頭線、臨港貨物線、公共臨港線など）。本記事では、これらの通称を「山下臨港線」として統一して記述します。

横浜港駅より先の線路は横浜市港湾局が所有し、山下埠頭駅の業務運営は神奈川臨海鉄道が行っていました。

廃止への流れ

横浜市が進めた都心部強化事業により、沿線地域が再開発され、みなとみらい地区や本牧埠頭などの新たな港湾施設が整備されました。これにより山下埠頭の重要度が低下しました。さらに、モータリゼーションの進展により、貨物輸送が鉄道から自動車へとシフトしたことも、山下臨港線の運行頻度を低下させる要因となりました。

これらの背景から、山下臨港線は1986年に廃止されました。しかし、山下埠頭駅にあったキョクレイの麦芽積込施設が本牧埠頭駅に移転するまでは、鉄道による輸送が続けられていました。

貨物駅

山下臨港線には、以下の貨物駅が存在しました。

横浜港信号場
山下埠頭駅

横浜博覧会臨港線

1989年に開催された横浜博覧会では、会場へのアクセス手段として、旧山下臨港線の一部を利用した横浜博覧会臨港線が運行されました。この路線は、日本国有鉄道清算事業団などから借り受けた線路を改修し、財団法人横浜博覧会協会が運営しました。

開業: 1989年3月25日
廃止: 1989年10月1日
路線: 日本丸駅～山下公園駅間
営業キロ: 2,066m
運行速度: 45km/h
所要時間: 5分
運賃: 大人400円、小人200円
乗客数: 1,475,738人

駅

駅舎は初代横浜駅（現桜木町駅）をイメージしたデザインで、駅員の制服もクラシックなデザインでした。

日本丸駅（日本丸メモリアルパーク内）
山下公園駅（山下公園おまつり広場前）

車両

当初は、日本の鉄道発祥の地をアピールするため、蒸気機関車（SL）を運行させる計画がありました。JR東日本は、静態保存されていた国鉄D51形蒸気機関車498号機を復元しましたが、過去のSL運行時の混乱から、安全確保の費用がかさむため、SLの運行は中止されました。

代わりに、新潟鐵工所製のレトロ調気動車2編成4両（緑色の汐風号とえんじ色の浜風号）が導入されました。これらの気動車は、博覧会閉会後、三陸鉄道に譲渡され、さらにミャンマー国鉄へ売却されました。

プロムナードの整備

山下臨港線の廃止後、線路や高架橋は長らく放置されていましたが、地元からの要望により、山下公園内の景観を回復させる工事が始まりました。2000年までに、公園敷地内の高架は撤去されました。

一方、1997年には桜木町から新港までの廃線跡が遊歩道「汽車道」として整備されたことから、山下公園より西側の高架も同様に遊歩道として整備されることになりました。新港地区の新港橋梁から山下公園手前までの高架が整備され、2002年に「山下臨港線プロムナード」として一般開放されました。

今後、象の鼻パーク周辺の整備に伴い、プロムナードの一部が撤去される可能性もあります。

なお、2007年現在も、山下埠頭の道路上には山下臨港線の線路跡が残っています。

参考資料

神奈川臨海鉄道 事業開発室編『創業25年のあゆみ』神奈川臨海鉄道株式会社、1988年
吉川文夫『東京 電車のある風景 今昔 II』JTBパブリッシング、2001年
長谷川弘和『横浜の鉄道物語』JTBパブリッシング、2004年

関連項目

東海道本線
ボート・トレイン
高島線
横浜博覧会
三陸鉄道36-300形気動車
汽車道
東横線跡地遊歩道
横浜みなとみらい21
山下公園
象の鼻パーク
山下埠頭
本牧埠頭

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