山村座

山村座（やまむらざ）とは

山村座は、江戸時代に存在した歌舞伎の劇場です。1642年（寛永19年）に江戸の木挽町四丁目（現在の東京都中央区銀座6丁目）に開場しました。河原崎座、森田座（後の守田座）と共に「木挽町三座」と呼ばれ、後に中村座、市村座と並び「江戸四座」として名を馳せました。しかし、1714年（正徳4年）に起こった「江島生島事件」の影響で、官許を没収され廃座となりました。その存続期間は72年間でした。

歴史

開場から発展

山村座は、1642年に小兵衛という人物によって開場したとされています。しかし、1644年に山村長兵衛が開場したという説や、岡村長兵衛が開場した岡村座であったとする説も存在します。初代山村長太夫は、小兵衛または岡村長兵衛の前名であるとも言われています。

開場当初は、軽業などの見世物を行う小芝居小屋でした。しかし、1670年前後に三代目山村長太夫が座元に就任すると、大芝居（歌舞伎）の劇場へと業態を転換しました。この三代目山村長太夫は、初代の甥である岡村七十郎が二代目の養子となり、岡村五郎左衛門と改名した後、三代目を襲名した人物です。守屋毅の研究によると、三代目登場以前は山村座の前史的時代であり、座元が「長太夫」を名乗ったのも三代目からであるとされています。

江戸四座の確立

三代目の時代である延宝年間（1673年 – 1681年）には、中村座、市村座、森田座と共に、官許四座の制度が確立しました。この頃、三代目の養子が四代目山村長太夫を襲名しています。1697年（元禄10年）には、三代目の子である山村七十郎がわずか9歳で五代目長太夫を襲名し、幼くして座元となりました。この時、四代目は隠居し浄閑と改名しています。

歌舞伎界への貢献

1703年（元禄16年）には、山村座で初演された『傾城阿佐間曾我』が、『仮名手本忠臣蔵』よりも先行して赤穂事件を題材とした作品であるとされています。また、1704年（元禄17年）には、二代目市川團十郎が山村座で襲名披露を行いました。二代目團十郎は、山村座専属の役者であった生島新五郎の指導を受け、1713年には『花館愛護桜』で助六を演じ、これが彼の出世作となりました。

廃座

しかし、1714年（正徳4年）に起こった「江島生島事件」により、事態は急変しました。この事件に五代目山村長太夫が連座したため、五代目は伊豆大島へ遠島となり、山村座は官許を取り上げられ廃座となりました。これにより、「江戸四座」は「江戸三座」となり、山村座の歴史は幕を閉じました。

所在地と経営者

所在地：江戸木挽町四丁目（現在の東京都中央区銀座6丁目14番、コートヤード・マリオット銀座東武ホテルの位置）
北緯：35度40分7秒
東経：139度45分54秒

経営者:
初代山村長太夫 （1642年 - 1660年前後）
二代目山村長太夫 （1660年前後 - 1670年）
三代目山村長太夫 （1670年 - 1670年代）
四代目山村長太夫 （1670年代 - 1697年）
五代目山村長太夫 （1697年 - 1714年）

まとめ

山村座は、江戸初期から中期にかけて、木挽町を芝居の街として発展させる上で重要な役割を果たした劇場でした。その歴史は72年と短いながらも、歌舞伎の発展に大きく貢献し、多くの役者を輩出しました。江島生島事件による廃座は、当時の歌舞伎界に大きな影響を与えました。

脚注

所在地は現在のコートヤード・マリオット銀座東武ホテルの位置に相当します。
山村座は、歌舞伎の歴史において重要な役割を果たした劇場の一つです。
江島生島事件は、山村座の歴史を語る上で欠かせない出来事です。

参考文献

『近世芸能興行史の研究』、守屋毅、弘文堂、1985年
『おんな今も昔も史 - お市の方から与謝野晶子まで』、泉秀樹、PHP文庫、1992年

関連項目

江戸三座
山村長太夫 - 曖昧さ回避ページ
山村長太夫 (5代目)
市川團十郎 (2代目)
江島生島事件

外部リンク

デジタル大辞泉『山村座』 - コトバンク

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