山田文雄 (平安時代)

山田文雄（やまだ の ふみお）は、平安時代初期から前期にかけて活動した、宿禰姓を名乗る貴族である。生没年は明らかではないが、その経歴は仁明、文徳、清和の三朝にわたることが、『六国史』などの史料によって確認できる。最終的には従五位下の位階に達し、大和介などの官職を務めた。

彼の官歴は、仁明朝の後半、承和年間から始まる。正確な補任時期は不明ながら、正六位上にあったことが記録に見える。承和9年（842年）4月1日には、太政官の書記官である右大史の任にあった。この年は、唐への朝貢国であった渤海からの使節が来日しており、山田文雄は同年、使節団の副使であった賀福延らが滞在する鴻臚館へ派遣され、彼らに朝廷から賜る時服を届けるという、当時の国際交流における重要な儀礼の一端を担った。

続く承和10年（843年）正月11日には、地方官に任じられる者に与えられる外位である外従五位下に叙せられた。そして、そのわずか一日後の正月12日には、大和国の次官である大和介に補任される。その後、承和15年（848年）5月28日には、勘解由次官として再び京官に戻った。勘解由次官は、勘解由使庁という役所で、国司の交代時に前任者と後任者間の公文書の引き継ぎが正しく行われたかを監査する役職であり、国の財政や統治の透明性を保つ上で重要な役割を担っていた。

文徳天皇が即位した後の嘉祥3年（850年）6月19日、山田文雄は備後介に遷任した。ここから文徳朝の期間にかけて、彼は主に地方官としての経験を積むことになる。仁寿4年（854年）正月7日には、地方官でありながら、京官と同等の評価を示す内位である従五位下に昇叙された。これは、彼が地方官として一定の功績を挙げたか、あるいは中央における影響力が強まったことを示唆している。その後、斉衡3年（856年）正月12日には河内国の次官である河内介に任じられている。

清和天皇の治世に移った貞観5年（863年）3月19日、山田文雄は散位頭に任ぜられ、再び京官に復帰する機会を得る。散位頭は、位階を持ちながら特定の官職に就いていない人々（散位）を管轄する役職であり、名誉職的な側面もあったと考えられている。しかし、彼の京官としての期間は長くは続かなかった。貞観8年（866年）正月13日には、かつて任じられた大和介に再び補任され、再び地方官としての任にあたることとなった。この大和介への再任をもって、彼の官歴は史料上からは見えなくなる。

山田文雄の経歴を概観すると、彼は正六位上から始まり、外従五位下を経て内位の従五位下にまで昇進した。その過程で、太政官の書記官、国司の次官、国司交代監査官、散位の管理官など、京官と地方官の様々な役職を歴任している。特に仁明朝における渤海使接待という対外的な役割や、文徳朝での従五位下への内位昇叙は、彼のキャリアにおける特筆すべき点である。彼の歩みは、平安時代前期の貴族が、中央と地方を往復しながら官位を積み重ねていった実像を示す一例として興味深い。

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