山雲 (明)

山雲（さん うん）

山雲は、明代の軍人であり、その生涯は動乱の時代と深く関わっています。彼の出自は徐州にあり、生年は不詳ながら、1438年にその生涯を閉じたとされています。父は都督僉事の山青であり、山雲は金吾左衛指揮使の位を継承しました。

生涯

山雲は若き頃から軍人としての才能を発揮し、しばしば塞外への遠征に従軍しては功績を重ねました。当時、幼軍25所は府軍前衛に属していましたが、その管理が不十分であったため、山雲を含む5人が新たに幼軍を監督することになりました。1424年、洪熙帝の即位に伴い、山雲は行在中軍都督僉事に抜擢され、その軍事的な手腕が朝廷からも認められるようになりました。

1426年には、山雲は北京行都督府に転任し、都御史の王彰と共に山海関から居庸関にかけての巡視を担当しました。この任務を通じて、彼は国境防衛の重要性を改めて認識し、その後の軍事活動に活かしていくことになります。宣徳帝が漢王朱高煦を討伐する際には、山雲は召還された鄭王と襄王を補佐し、北京の留守を任されました。このことから、彼が皇帝からの厚い信頼を得ていたことが伺えます。

山雲の最大の功績は、1427年から広西地方で発生した少数民族の反乱鎮圧における活躍でしょう。柳州府・慶遠府の少数民族である韋朝烈らが臨桂県などを略奪した際、鎮遠侯顧興祖が救援に失敗して更迭された後、山雲が後任として選ばれました。1428年、山雲は征蛮将軍の印を佩き、総兵官として広西へと派遣されました。彼は着任後、ただちに韋朝烈を討伐し、これを撃破しました。

反乱軍は山頂を拠点に抵抗を試みましたが、山雲は夜半に牛や羊の角に松明をつけ、その後ろで兵に金鼓を鳴らしながら山に追い立てるという奇策を用いました。反乱軍は官軍が来たものと勘違いして木石を落とし、夜明けにはその木石が尽きたところで官軍が突撃し、反乱軍を壊滅させました。この戦いによって、南安や広源の少数民族は降伏し、山雲の名声は広西一帯に轟きました。

その後も、忻城県の少数民族である譚団の反乱や、柳州府・潯州府の少数民族の反乱を鎮圧し、1429年には雒容県の少数民族による略奪を撃退するなど、山雲は広西地方の安定に大きく貢献しました。彼は指揮官の王綸が良民を殺害した罪を弾劾するなど、公平な視点も持ち合わせていました。広西では韓観の死後、少数民族の反乱が頻発していましたが、山雲は貴州の兵を留めて活用するなど、柔軟な対応も行いました。その後も、潯州府・柳州府・平楽府・桂林府・宜山県・思恩県の少数民族の反乱を鎮圧し、その武勇を広く知らしめました。

1434年、慶遠府と鬱林州の苗族や瑶族が反乱を起こすと、山雲は増援を要請し、広東からの兵1500人が派遣されました。山雲は兵を分けて掃討作戦を展開し、多くの反乱者を捕斬しました。また、指揮の田真を派遣して大藤峡の反乱軍を撃破し、その功績により都督同知に進みました。1435年には右都督に進むなど、その昇進は止まることがありませんでした。

1435年、英宗が即位すると、山雲は落馬して股を負傷しましたが、英宗は医者を派遣して診察させるなど、彼への信頼は厚いものでした。山雲は病を理由に交代を願い出ましたが、英宗はこれを許可しませんでした。1437年には、潯州府と大藤峡の瑶族の反乱に対処するため、左右両江の土司の狼兵を徴用して屯田させることを上奏し、英宗の許可を得ています。しかし、1438年、山雲は広西にて病没し、その生涯を閉じました。死後、懐遠伯の爵位が追贈され、忠毅という諡が贈られました。長子の山俊が、府軍前衛指揮使の位を継いでいます。

山雲の生涯は、明代初期の動乱の時代において、軍人として忠誠を尽くし、卓越した軍事力と柔軟な対応力で数々の困難を乗り越えた人物として、歴史に名を刻んでいます。

参考文献

* 『明史』巻166 列伝第54

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