川村文雄

川村 文雄（かわむら ふみお）

1978年7月22日生まれ、福井県坂井郡丸岡町（現在の坂井市）出身のクラシック音楽ピアニスト。

略歴とキャリア

競艇選手である川村正輝氏を兄に持ち、祖父母と両親が経営する本屋の次男として生を受ける。5歳の頃、遊び道具としていたリードオルガンを壊してしまうほど熱中したことがきっかけとなり、ピアノを習い始める。幼少期から既にピアニストへの強い憧れを抱いていたという。高等学校の普通科在学中に、周囲との関係性の問題から約一年間ピアノから離れる期間があったが、国際交流事業の派遣団の一員に選ばれ渡米。ニュージャージー州でのホームステイ経験を通じて自己を見つめ直したことが転機となり、帰国後に再びピアノに打ち込み始める。1997年に高校を卒業し、桐朋学園大学演奏学科に入学。同年、早くも桐朋アカデミーオーケストラのソリストに抜擢され、指揮者ジャン・フルネ氏と共演する機会を得る。翌年に参加した第2回別府アルゲリッチ音楽祭では、世界的ピアニストであるマルタ・アルゲリッチ氏から国際コンクールへの挑戦を勧められ、これを契機にコンクール参加への決意を固めたとされる。

2000年には明治安田クオリティオブライフ文化財団が主催する海外コンクール派遣オーディションに合格。日本・デンマーク文化交流事業の一環として、コペンハーゲンフィルハーモニー管弦楽団（チボリ交響楽団）との共演を果たす。2001年、桐朋学園大学音楽学部演奏学科を首席で卒業。2002年には日本ショパン協会主催のリサイタルでソリストとして公式なデビューを飾る。以降、国内各地での演奏活動を展開する一方で、現代曲の国内初演や室内楽、さらにはテレビドラマの吹き替えや演技指導といった音楽以外の分野でのコラボレーションにも積極的に取り組む。また、同郷の作曲家である今川節氏の作品の音源化プロジェクトにも携わっている。現在は洗足学園音楽大学ピアノ科の非常勤講師としても後進の指導にあたっている。

受賞歴

数々の国内外のコンクールで輝かしい成績を収めている。主な受賞歴は以下の通りである。

1992年 洗足学園前田賞、讀賣新聞社賞
1998年 第67回 日本音楽コンクール ピアノ部門 第2位
2001年 NTTドコモ賞
2003年 第4回かずさアカデミア音楽コンクール 第1位、第1回東京音楽コンクールピアノ部門 第2位、第8回コンセール・マロニエ21優秀賞、第23回エットーレ・ポッツォーリ国際ピアノコンクール第2位（1位なし）およびロータリー賞、江戸川区文化奨励賞（最年少受賞）
* 2005年 第51回マリア・カナルス・バルセロナ国際音楽演奏コンクールピアノ部門 第3位

エピソードと音楽観

ピアノ演奏活動以外にも多趣味であり、料理や写真といった音楽以外の話題も頻繁に紹介されている。本屋に生まれたため読書家と思われがちだが、20歳頃までは活字を読むことに苦手意識があり、学業にも苦労した時期があったと語っている。音楽大学卒業後、ディーナ・ヨッフェ、ミハイル・ヴォスクレセンスキー、パーヴェル・ネルセシアンといった著名な音楽家からの助言を受けつつも、自身の判断で海外への音楽留学は行わなかった。特にエリソ・ヴィルサラーゼ氏を敬愛しており、氏からの「あなたは日本で素晴らしい勉強が出来ているのね」という言葉が、音楽に対する自身の立ち位置に迷いが生じた時期を乗り越える大きな支えとなり、音楽への誠実な向き合い方があれば、どこにいても道は開けるという大きな希望と勇気を与えてくれたと述べている。

近年の困難と活動

2019年7月に左耳、その後右耳の聴力を相次いで失い、重度の両側性感音性難聴と診断された。2021年現在も聴力の回復は見られていない。この困難な状況の中にあっても、音楽への情熱を絶やさず、活動を続けている。

共演者とレパートリー

国内外の著名な指揮者やオーケストラとの共演経験も豊富である。主な共演者には指揮者の小林研一郎氏、飯森範親氏、ジャン・フルネ氏、岩村力氏、沼尻竜典氏などが挙げられる。オーケストラではハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、新日本フィルハーモニー管弦楽団、コペンハーゲンフィルハーモニー管弦楽団などと共演している。レパートリーは主に古典派からロマン派の作品を中心としており、特に2016年度はソロリサイタルにおいてショパン以前の作品を中心としたプログラムに取り組んだ。コンチェルトのレパートリーは20曲にも及ぶ。

ディスコグラフィーとして、『川村文雄デビューリサイタル』、『川村文雄プレイズショパン』などのアルバムをリリースしている。

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