布施辰治

布施 辰治について

布施辰治（ふせ たつじ、1880年11月13日 - 1953年9月13日）は、宮城県出身の著名な弁護士兼社会運動家として知られ、日本人として初めて大韓民国の建国勲章を授与された人物です。

幼少期と教育

宮城県牡鹿郡蛇田村の農家に生まれた布施は、少年時代から平和主義に親しみ、また神田ニコライ堂付属の神学校に進学しましたが、すぐに退学。以降、トルストイ運動から影響を受けつつ、妻の信仰である日蓮正宗に改宗しました。彼は東京専門学校（現・早稲田大学）を経て、明治法律学校（現・明治大学）を1902年に卒業。22歳で司法官試補としてのキャリアをスタートさせましたが、心中未遂の事件に関与し、司法官職を辞する決断を下しました。

弁護士としてのキャリア

その後、布施は弁護士に転身しますが、初めは苦労を重ねました。しかし、1917年の鈴ヶ森おはる殺し事件で無罪を勝ち取ったことが転機となり、以降は年に250件を越える事件を手掛ける刑事弁護士として名を馳せました。特に労働争議や廃娼運動、普選運動などの社会問題にも積極的に取り組み、多くの名事件を抱えることになります。

特に知られるのは、朝鮮独立運動に関連する弁護活動です。戦前の二重橋爆弾事件や朴烈事件、戦後の評定河原事件など、多数の事件に関与しました。この活動が評価され、2004年には韓国政府から大韓民国建国勲章愛族章を受章し、布施の名は日本だけでなく韓国でも尊敬を集めることとなりました。

政治活動と法的影響

普選運動にも積極的に関わった布施は、労働農民党の候補としての選挙に出馬しましたが、当選には至らず。その後も日本共産党の非合法な弁護人として活動しましたが、1929年に法廷で起訴され、最終的には弁護士資格を剥奪されてしまいます。続く治安維持法違反の罪で、1年以上の実刑判決を受けることとなりました。

戦後の活動と晩年

戦後、自由法曹団の再興に尽力した布施は、三鷹事件の際、主犯の無実を主張。最終的には衝突が激化し弁護団から脱退しました。布施は1953年に癌によりこの世を去り、東京都豊島区の常在寺に埋葬されました。その境内には彼の座右の銘である「生きべくんば民衆とともに、死すべくんば民衆のために」を刻んだ顕彰碑があります。

思想と影響

布施の思想は独特であり、死刑廃止を主張した他、民本主義に基づく陪審制の支持者でもありました。また、天皇制に関しては、国民に支持されている制度の急激な解体を否定し、自然に消えることを望んでいました。教育者としての乃木希典を尊敬しつつも、軍人への嫌悪感を公言していました。

さらに、将棋を志してプロ棋士一歩手前の三段まで昇級した経験を持つ布施は、その多才な側面も併せ持っていました。先天的な色覚異常を抱えつつも、強い信念と思索による生涯を送りました。彼の生涯と業績は、現在でも多くの人々に影響を与え続けています。

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