内ヶ島氏理

内ヶ島氏理：帰雲城とともに滅びた武将

内ヶ島氏理（うちがしま うじまさ/うじとし）は、戦国時代末期から安土桃山時代にかけて、飛騨国（現在の岐阜県北部）で勢力を誇った武将です。内ヶ島氏は飛騨の国人で、白川郷を拠点としていました。その地は険しい山々に囲まれた場所であり、歴代当主は領地の統治に専念し、周辺の戦国史に積極的に関与することは少なかったとされています。

生涯

氏理の出自や正確な系譜は不明な点が多いものの、幼くして家督を継いだと考えられています。家臣団に支えられ成長し、領主としての地位を確立しました。天正4年（1576年）から天正6年（1578年）にかけて、上杉謙信やその配下である姉小路頼綱の侵攻を受けましたが、これを撃退。この勝利を機に、氏理は新たな勢力との関係構築を模索し始めます。

謙信の死後、越後を中心に勢力を拡大していた織田政権、特に越中国に拠点を築いた佐々成政との接触を試みました。これは、白川郷で勢力を誇り、飛騨全土の浄土真宗の中心であった照蓮寺に対抗するため、織田政権の支援を期待したためと考えられています。当時、織田政権は石山本願寺と対立しており、同じ浄土真宗でありながら敵対する勢力への接近は、氏理の戦略的な判断と言えるでしょう。

天正10年（1582年）、越中に侵攻してきた上杉景勝に対抗するため、氏理は佐々成政の軍に援軍を送りました。しかし、織田信長が本能寺の変で死去したことで、織田氏による上杉攻めの戦線は一時中断。内ヶ島軍も白川郷へと帰還しました。

天正11年（1583年）には、領内の山河への立ち入り禁止を取り締まるため、違反者には厳罰を科すことを照蓮寺に再確認させています。これは、領内の統治を強化するための措置であり、氏理の支配力を示すものと言えるでしょう。

天正13年（1585年）には、佐々成政が羽柴秀吉（後の豊臣秀吉）の侵攻を受けた際、氏理は佐々軍の援軍として越中に出陣しました。しかし、秀吉の圧倒的な軍勢の前に成政は降伏。さらに、氏理の留守中に家臣の裏切りによって帰雲城は金森長近に奪われてしまいました。姉小路氏も所領を失い降伏。氏理自身も金森長近を通じて秀吉に降伏し、内ヶ島氏の家名と所領は安堵されたものの、飛騨一国を治めることになった長近の支配下に入ることになりました。

帰雲城の崩壊と一族の滅亡

天正13年11月29日、帰雲城では和睦成立を祝う宴が予定されており、氏理、娘婿の東常堯、嫡男の氏行をはじめとする一族、重臣、家臣らが城に集まっていました。しかし、その日の深夜に天正地震が発生。帰雲山が大規模な山崩れを起こし、帰雲城は土砂に埋没してしまいました。この災害により、内ヶ島氏の一族郎党は一夜にして滅亡しました。

この悲劇的な出来事の中で、唯一、氏理の弟である経聞坊は宴に参加していなかったため、難を逃れました。彼は、この地震に関する記録（経聞坊文書）を残し、後世に当時の状況を伝えています。また、譜代家臣で内ヶ島氏の血縁でもあった山下時慶・山下氏勝父子も生き残りました。特に氏勝は、後に江戸幕府成立後の尾張藩に仕え、清洲越しと呼ばれる大規模な都市移転を主導する人物となりました。

帰雲城跡と埋蔵金伝説

帰雲城跡には、埋蔵金伝説が残っています。しかし、この伝説は古くから白川地域に伝わっていたものではなく、1970年代に内ヶ島氏の末裔を称する人物が広めた話が、メディアによって拡散したものであることが指摘されています。

まとめ

内ヶ島氏理は、激動の戦国時代を生き抜いた武将でしたが、天正地震という天災によって、一族と共に歴史の舞台から姿を消しました。彼の生涯は、地方豪族の興亡と、自然災害の脅威を物語るものです。その悲劇的な最期は、今もなお人々の記憶に刻まれています。

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