平民社

平民社：反戦と社会主義を掲げた結社

平民社は、明治時代に幸徳秋水と堺利彦を中心に設立された社会主義結社です。日露戦争開戦に反対し、平和主義と社会主義を主張しました。機関紙『平民新聞』を発行し、社会主義思想の普及と社会変革を目指しました。

設立の背景

1903年、日露戦争開戦を支持する世論が高まる中、新聞『萬朝報』が開戦論へと転換しました。これに異議を唱えた幸徳秋水と堺利彦は、『萬朝報』を退社し、非戦論を貫くために平民社を設立しました。小島龍太郎や加藤時次郎らの資金援助を受け、新聞社として活動を開始しました。

平民新聞の発行

平民社は、週刊新聞『平民新聞』を創刊しました。この新聞は、社会主義思想の普及と、日露戦争反対を主張しました。第1号には、「平民主義・社会主義・平和主義」を掲げる「宣言」と「発刊の序」が掲載され、日本の社会主義運動に大きな影響を与えました。また、『共産党宣言』の翻訳を掲載するなど、海外の社会主義思想も積極的に紹介しました。

国際的な連帯

『平民新聞』は、海外の社会主義者との連帯を重視しました。第一面に英文欄を設け、アメリカ、イギリス、ロシアなどの社会主義者へ情報発信を行い、国際的な協力を訴えました。その結果、第二インターナショナルの大会で、片山潜とロシア代表プレハーノフが握手を交わし、国際的な社会主義運動の連帯を示す象徴的な出来事を生み出しました。

活動の終焉

日露戦争の非戦を主張した平民社は、政府の弾圧を受けました。機関紙『直言』は廃刊に追い込まれ、財政難と内部対立も重なり、設立から約2年で解散しました。しかし、平民社の活動は、その後の日本の社会主義運動に大きな影響を与え、後の社会運動の先駆けとなりました。

その後の平民社

平民社はその後、1907年に日本社会党の機関紙発行所として再興しますが、当局の弾圧により短期間で再び解散します。その後も再興を試みましたが、主要メンバーが幸徳事件で失われ、活動を終えました。平民社の活動は短期間でしたが、日本の社会主義運動における重要な役割を果たしました。

平民社の意義

平民社は、非戦論を唱え、社会主義思想を広めたことで、日本の社会運動の歴史において重要な存在です。機関紙『平民新聞』は、その後の社会主義運動に影響を与え、国際的な連帯を重視する姿勢は、現代の社会運動にも通じるものがあります。

関連文献

平民社の活動を研究するための関連文献として、以下のようなものがあります。

荒畑寒村『平民社時代』
李京錫「平民社における階級と民族」
絲屋寿雄『菅野すが－平民社の婦人革命家像』
梅森直之編著『帝国を撃て－平民社100年国際シンポジウム』
太田雅夫『初期社会主義史の研究』
柏木隆法ほか著『大逆事件の周辺－平民社地方同志の人びと』
幸徳秋水 / 山泉進編集・解題『幸徳秋水』
堺利彦 / 堀切利高編・解題『堺利彦』
志村正昭「堺利彦－週刊『平民新聞』」
シンポジウム‘平民社100年と「熊本評論」’事務局編『非戦・自由・人権－平民社100年と「熊本評論」』
鈴木裕子編『資料 平民社の女たち』
西川文子 / 天野茂編『平民社の女-西川文子自伝』
林尚男『平民社の人びと－秋水・枯川・尚江・栄』
松本三之介『明治精神の構造』
山泉進編著『社会主義事始』
山泉進『平民社の時代－非戦の源流』
『初期社会主義研究』第7号（特集＝平民社90年）
『初期社会主義研究』第16号（特集＝平民社百年）

これらの文献を通して、平民社の歴史や思想、活動についてより深く理解することができます。

関連項目

非戦論
売文社
社会主義
赤旗事件
* 幸徳事件

これらの項目も合わせて参照することで、平民社に関する理解をさらに深めることができるでしょう。

脚注

初期社会主義研究会公式ウェブ・サイト

週刊「平民新聞」

直言

日刊「平民新聞」

もう一度検索