広瀬川 (群馬県)

広瀬川とは

広瀬川は、群馬県渋川市から前橋市、伊勢崎市へと流れる、利根川水系の一級河川です。この川は、同じく利根川から取水する桃ノ木川とともに、古くから農業用水として利用されてきました。特に用水路としては「広瀬用水」という名前で知られ、その歴史的価値から疏水百選にも選ばれています。広瀬川と桃ノ木川を合わせた用水は、「広桃用水」や「広瀬桃木用水」とも呼ばれます。

江戸時代には、「比刀根川」または「比利根川」という名前で呼ばれていました。

地理

広瀬川は、群馬県渋川市で利根川から分かれ、前橋市街を南東方向に流れます。その流路は、ほぼJR両毛線に沿うように続き、伊勢崎市境平塚で再び利根川に合流します。合流地点の近くには、埼玉県深谷市との県境があります。

川の一部は暗渠となっており、小出発電所から県営競技場の東、前橋市立岩神小学校の東にかけては地中に埋まっています。また、上毛電気鉄道の中央前橋駅付近では、駅前ロータリーの整備に伴い暗渠化されました。

歴史

戦国時代まで、利根川の本流は現在の桃ノ木川や広瀬川が流れる低地を流れていました。しかし、応永年間（1394年～1427年）に利根川の流路が変わり、現在のような流れになったと伝えられています。前橋市千代田町には、「舟つなぎ石」が残っており、これは当時の渡し船の乗り場の名残とされています。

広瀬川に関する最も古い記録は、貞享元年（1684年）に書かれた『前橋風土記』に見られます。この文献には、広瀬川と桃木川の名前が当時から存在していたこと、広瀬川が比利根川と呼ばれていたこと、そして現在とほぼ同じ流路を流れていたことなどが記されています。また、両河川が利根川の異なる場所から取水していたことも分かります。

江戸時代初期には、前橋河岸や伊勢崎河岸が開設され、広瀬川は灌漑だけでなく、舟運にも利用されました。

もともと広瀬川と桃ノ木川の取水口は別々に設けられていましたが、利根川の川床が低下したため、広瀬川の取水口からの取水が困難になりました。そこで、1905年（明治38年）に「三ノ洗」で桃ノ木川から広瀬川へ分水する工事が行われました。

1947年（昭和22年）にカスリーン台風が発生し、広桃用水の取水口が大きな被害を受けました。その結果、対岸を流れる天狗岩用水と共同で取水口を設置することになり、北橘村（現在の渋川市）に新たに坂東大堰合口が設けられました。そこから隧道を通って広桃用水と天狗岩用水に分けられ、板東橋の直下をトンネルで対岸に渡る工事が1951年（昭和26年）5月に完了しました。

しかし、砂礫の流入が多く、取水口だけでは水量が安定しなかったため、1964年（昭和39年）から取水口の改修や隧道の延長などが行われました。佐久発電所からの放水も新たに加えられ、坂東大堰合口は予備として使用されるようになりました。この工事は1967年（昭和42年）3月に完了し、安定した水量を確保できるようになりました。

群馬県企業局は、坂東水系総合開発事業の一環として、広瀬用水の各所に田口、関根、小出、柳原の4つの発電所を建設しました。また、東京電力と日本カーリットもそれぞれ前橋発電所と広桃発電所を建設しました。

柳原発電所の少し手前にある広瀬川制水門から南側は、一級河川の広瀬川として利根川の支流となり、下流で桃ノ木川などが合流し、伊勢崎市境平塚付近で再び利根川に合流します。

1947年のカスリーン台風の際には、集中豪雨により広瀬川が決壊し、伊勢崎市内に広範囲な水害をもたらしました。

現在では、親水施設が整備され、「水と緑と詩の町」として前橋市のシンボルとなっています。

支流

広瀬川には、以下の支流があります。

風呂川（分流）
柳原放水路（分流）
端気川（分流）
佐久間川
韮川（分流）
桃ノ木川
荒砥川
平釜川
赤坂川
蛇川
大川
粕川
韮川

橋梁

広瀬川には、多くの橋が架かっています。

利根川から取水
広桃発電所（旧田口発電所）
内島橋
田口橋
広瀬川橋側道橋(上)
広瀬川橋（国道17号前橋渋川バイパス）
広瀬川橋側道橋(下)
広瀬橋（群馬県道161号南新井前橋線）
稲荷橋（群馬県道6号前橋箕郷線）
梅が橋
広瀬橋
相生橋
石川橋
柳橋
厩橋（国道17号）
比刀根橋
絹の橋
朔太郎橋
諏訪橋（群馬県道3号前橋大間々桐生線）
久留万橋（群馬県道4号前橋赤城線）
桃井橋
広東橋
共栄橋
朝貝橋
新東橋（国道50号）
天六橋（群馬県道2号前橋館林線）
天大橋
新川橋（群馬県道40号藤岡大胡線）
新小屋原橋（群馬県道2号駒形バイパス）
落合橋
北関東自動車道
新須永橋
須永橋
宮子大橋
龍宮橋
三ッ家橋
新開橋
新橋
永久橋（群馬県道24号)
水管橋
広瀬大橋
競運橋
いせさき大橋（群馬県道295号境島村今泉線）
光円橋（国道462号）
茂呂大橋（群馬県道295号）
豊受橋（群馬県道295号）
豊東橋
武士橋（国道354号）
昭和橋
中島橋
利根川合流点

河川施設

広瀬川流域には、以下の発電所があります。

日本カーリット広桃発電所 - 日本カーリット株式会社の自家用発電所。
1952年（昭和27年）12月 - 着工。
1953年（昭和28年）12月 - 完成。
1954年（昭和29年）1月 - 運転開始。
群馬県営田口発電所
1966年（昭和41年）4月24日 - 運転開始。
群馬県営関根発電所
1967年（昭和42年）5月13日 - 営業運転開始。
東京電力リニューアブルパワー前橋発電所
1933年（昭和8年）8月 - 広瀬川電力株式会社によって竣工、同月操業開始。
1942年（昭和17年）12月1日 - 配電統制令によって関東配電株式会社に統合。
1951年（昭和26年）5月1日 - 東京電力株式会社となる。
群馬県営小出発電所
1967年（昭和42年）5月13日 - 営業運転開始。
群馬県営柳原発電所
1967年（昭和42年）5月13日 - 営業運転開始。

その他の関連情報

広瀬川河畔緑地（前橋市） - 国道17号から中央前橋駅間に整備された緑地。萩原朔太郎の「広瀬川」詩碑があります。「広瀬川河畔緑地緑道」として、昭和61年度に手づくり郷土賞（ふれあいの水辺）を受賞し、平成17年度には大賞を受賞しました。
ラブリバー親水公園うぬき（伊勢崎市安堀町）

参考文献

広桃用水史編さん委員会編『広桃用水史』広瀬桃木両用水土地改良区、1994年3月31日。
前橋市史編さん委員会編『前橋市史』 3巻、前橋市、1975年10月1日。

外部リンク

広瀬用水（広瀬川） - 疏水名鑑
水土里ネット広桃用水 - 広瀬桃木両用水土地改良区

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