康暦の政変

康暦の政変とは

康暦の政変は、南北朝時代の康暦元年（1379年）に室町幕府の管領であった細川頼之が失脚した政変です。この事件は、室町幕府内部の権力闘争が激化した結果として起こりました。

政変の背景

室町幕府の初期は、守護大名間の対立が絶えませんでした。2代将軍足利義詮の時代には、執事の細川清氏が失脚し、南朝に属して京都を奪還するなどの混乱がありました。その後、斯波高経・義将父子が幕政を主導しましたが、佐々木道誉との対立から失脚しました。義詮の死後、細川頼之が管領に就任しましたが、その政策は旧仏教勢力との対立を招きました。

反頼之派の台頭

頼之の政策に対する不満が高まる中、成長した3代将軍足利義満は、山名義理・氏清兄弟や斯波義将、土岐頼康ら反頼之派の守護大名を重用しました。また、頼之の紀伊での南朝勢力討伐の失敗も、反頼之派を勢いづける要因となりました。永和3年（1377年）には、頼之の領地で騒動が起こり、斯波氏、土岐氏、山名氏らとの対立が表面化しました。

政変の勃発

康暦元年（1379年）に入ると、反頼之派は義満に頼之の排斥を求めました。近江で佐々木高秀が挙兵し、鎌倉公方の足利氏満もこれに呼応して軍事行動を起こそうとしました。京都では、反頼之派が義満に圧力をかけ、頼之の罷免を要求しました。義満は閏4月14日に頼之を罷免し、頼之は領国の四国へ落ち延び、その後出家しました。

守護の交代

政変後、大幅な守護の交代が行われ、細川派から斯波派への加増が目立ちました。例えば、越前の守護が畠山基国から斯波義将に、伊勢の守護が山名五郎から土岐頼康に変わるなど、多くの守護大名が入れ替わりました。

政変後の影響

頼之の失脚後、斯波義将が管領に就任し、幕府の人事は斯波派に塗り替えられました。義満は、頼之を追討しようとしますが、失敗に終わりました。その後、頼之は赦免され、弟の頼元が管領に任命され、頼之自身も幕政に復帰しました。この政変は、義満が守護大名の力を抑え、幕府の権力を強化するためのものであったと考えられています。

鎌倉公方との関係

一方、鎌倉公方の足利氏満は、この政変をきっかけに義満との対立を深めました。氏満は、将軍家や関東管領に対抗するために勢力拡大を図り、小山氏の乱などを引き起こしました。この対立は、後の永享の乱や享徳の乱へとつながり、鎌倉公方と足利将軍家、関東管領との間の長期的な対立の端緒となりました。

義満の権力強化

義満は、この政変後、将軍直轄の軍事力である奉公衆を整備し、土岐康行の乱、明徳の乱、応永の乱などの戦乱を通じて有力守護大名を弱体化させ、幕府の支配体制を強化しました。これらの出来事は、室町幕府の支配体制を固める上で重要な役割を果たしました。

まとめ

康暦の政変は、室町幕府の権力構造を大きく変えた重要な事件でした。この政変によって、細川氏から斯波氏へと政権が移行し、足利義満による幕府の権力強化が始まりました。また、鎌倉公方との対立が表面化し、その後の室町時代の政治に大きな影響を与えました。

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