廖湛

廖湛（りょう たん）

廖湛は、中国の新代末期に活躍した武将であり、その生涯は動乱の時代を色濃く反映しています。彼は反新勢力である平林軍の部将として台頭し、後に更始帝（劉玄）政権において重要な地位を占めましたが、政権内部の混乱や赤眉軍の侵攻により、最終的には悲劇的な結末を迎えます。

生涯

平林軍の蜂起と更始政権への参加

廖湛は、荊州南陽郡平林県（現在の湖北省棗陽市一帯）の出身です。地皇3年（22年）、同郷の陳牧と共に千人余りの兵を集め、「平林軍」を組織しました。この軍は、王匡らが率いる新市軍と連携し、新に対する反乱の狼煙を上げました。当時、劉玄も平林軍に安集掾として参加しており、後の更始帝となる彼との関係がこの時から始まります。

その後、劉縯率いる舂陵軍とも合流し、宛（南陽郡）を目指して進軍しましたが、小長安聚の戦いで新の前隊大夫（新制の南陽郡太守）甄阜・属正（新制の都尉）梁丘賜に敗北を喫します。しかし、地皇4年（23年）1月、王常率いる下江軍とも合流し、沘水の戦いで甄阜・梁丘賜を討ち取ることに成功しました。

連合軍内では、劉縯と平林軍出身の劉玄のどちらを皇帝として擁立するかが議論されました。南陽の士大夫や王常は劉縯を推しましたが、廖湛ら平林軍の将は劉玄を支持しました。最終的に、劉縯は分裂を避けるために劉玄に地位を譲り、更始元年（23年）2月、劉玄が更始帝として即位しました。廖湛は、この功績により執金吾大将軍に任命され、政権の重鎮となります。更始2年（24年）2月には、劉玄が長安へ遷都すると、廖湛は穣王に封じられました。

裏切りと赤眉軍への降伏

しかし、更始政権の内部は安定せず、様々な要因から崩壊へと向かいます。更始3年（25年）、王匡・張卬らが劉秀（後の後漢の光武帝）の武将である鄧禹に河東郡で大敗し、さらに赤眉軍が長安を目指して西進してくるという状況下で、衛尉の張卬は諸将に対し、「南陽に引き返すべきだ。敗北しても、再び沼沢地で盗賊に戻ればいい」と主張しました。この意見に廖湛を始めとする多くの将が賛同し、廖湛は王匡・張卬・胡殷・申屠建と共に、いったん南陽へ逃れることを更始帝に進言しますが、拒否されます。

これに不満を抱いた廖湛は、張卬・胡殷・申屠建・隗囂と共に、更始帝に対するクーデターを計画しますが、事前に察知され、誅殺されそうになります。廖湛ら4人は辛くも逃走に成功し（申屠建のみ処刑）、張卬の兵変に参加して更始帝を攻撃しました。更始帝は、姻戚の将である趙萌が駐屯する新豊（京兆尹）へ逃れました。

廖湛らは、新豊から逃げてきた王匡と共に長安を支配しましたが、まもなく更始帝・趙萌・李松（丞相）の反撃に遭い、敗走します。追い詰められた廖湛らは、赤眉軍に降伏し、彼らを長安へ導きました。同年9月、更始政権は滅亡しました。

赤眉政権での厚遇と最期

廖湛は、赤眉政権においても、降将でありながら部将として厚遇されます。公称18万もの大軍を率いることになり、建世2年（26年）、三輔に進入してきた旧更始政権の漢中王劉嘉の軍に攻撃を開始します。しかし、谷口（左馮翊。長安の西北部）の戦いで敗北し、廖湛は劉嘉自身の手によって斬首されました。

廖湛の生涯は、新代末期から後漢初期にかけての激動の時代を生き抜いた一人の武将の姿を伝えています。彼は、反乱軍の将として頭角を現し、一時は政権の重鎮にまで上り詰めましたが、内紛や裏切り、そして最終的な敗北という、波乱に満ちた人生を送りました。

参考文献

『後漢書』列伝1劉玄伝
同列伝4順陽懐侯嘉伝

関連項目

新末後漢初
赤眉軍

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