廣川泰三

廣川 泰三

廣川 泰三（ひろかわ たいぞう、1937年5月28日 - 1989年6月19日）は、昭和の時代に活躍した大相撲力士です。神奈川県横須賀市で生まれ、初め高嶋部屋、後に宮城野部屋に籍を置きました。本名は山村 泰三。現役時代は177センチメートル、141キログラムの体格で、左四つからの寄りや突き押しを自身の持ち味としました。最高位は東小結で、血液型はB型でした。

現役時代

横須賀市立不入斗中学校を卒業後、高嶋部屋に入門し、1953年3月場所で角界入りを果たしました。同場所では番付外と新序で続けて良い成績を収めた結果、翌場所では序ノ口を飛び級して序二段の番付から土俵に上がりました。当初の四股名は「泰山」でした。

新弟子時代から、同じ部屋の先輩横綱であった吉葉山に目をかけられました。その縁から、吉葉山が引退して高嶋部屋から独立し吉葉山道場（後に宮城野部屋と改称）を設立すると、廣川もすぐにそこへ移籍しました。

腰の怪我により昇進が遅滞し、同部屋の後輩力士である明武谷や宇多川らに番付で先行される時期もありましたが、稽古に励み、1961年7月場所で新十両、1962年7月場所で新入幕を果たします。この新入幕の場所では、初日から5連勝するなど勢いを見せ、最終的に10勝5敗と大きく勝ち越しました。この活躍により、現役で一度きりの三賞となる敢闘賞に輝いています。彼の相撲ぶりは、立合いからの力強い突き押し、または左四つに組んで前に出る出足を生かした寄り相撲でした。

1964年5月場所では、自己最高位となる小結に昇進します。この場所では、大関の北葉山などを破る金星級の活躍も見せましたが、残念ながら7勝8敗と惜しくも負け越してしまい、三役での地位はこの場所限りとなりました。続く翌7月場所では、3日目に横綱・栃ノ海を突き落としで破り、現役生活でただ一度となる金星を獲得しています。

年寄時代

1969年1月場所を最後に現役を引退した後は、宮城野部屋の部屋付き親方として角界に留まりました。当初は年寄・押尾川、後に東関と名跡を変えながら、後進の指導に励みました。また、勝負審判としても土俵下で職務を務めました。そして、1977年11月に師匠である吉葉山が逝去したことに伴い、間髪入れずに9代宮城野を襲名し、宮城野部屋を継承しました。師匠としては、先代からの弟子であった港龍や竹葉山などを幕内まで育て上げています。しかし、1989年6月19日、舌がんのため52歳の若さで逝去しました。

逝去の約2週間前には、弟子の竹葉山の断髪式に師匠として参加する予定でしたが、病状の悪化により「病気療養」を理由に急遽出席を取りやめました。断髪式の止め鋏は、立浪・伊勢ヶ濱連合の総帥であった立浪親方（元関脇・羽黒山）が入れています。

逝去後の宮城野部屋継承

廣川の逝去を受け、部屋付きだった10代中川親方（元前頭13・竹葉山）が急遽年寄名跡を得て10代宮城野を襲名し、部屋を引き継ぎました。10代は師匠として、光法（後に20代音羽山）や後の大横綱白鵬などを育て上げます。しかし、2004年8月、廣川の次女と結婚し婿養子となった金親（現役時代は北の湖部屋に所属し、最高位は十両2）が11代宮城野を継ぎ、部屋を継承しました。これに伴い、10代宮城野は名跡を15代熊ヶ谷に変更し、再び部屋付きの立場に戻りました。10代宮城野が一旦は部屋を継承できたのは、借りの名跡ではなく正規に取得した名跡だったためとされますが、この交代劇から、継承は暫定的なものであったとも考えられています。

しかし、2010年12月、日本相撲協会は11代宮城野について師匠としての適格性に欠ける行動が見られたとして、師匠の地位を15代熊ヶ谷（元の10代宮城野）に戻す措置を講じる方針を理事会で決定しました。これにより、年寄名跡を交換する形で15代熊ヶ谷が12代宮城野として再び部屋の師匠に就任し、11代宮城野は16代熊ヶ谷として部屋付き親方となりました。この16代熊ヶ谷は、2013年に年寄名跡証書の協会提出を巡って廣川の遺族である山村家との間に軋轢が生じ、最終的には提出しましたが、その代償として離婚に至ったとされます。さらに2015年には個人マネージャーへの暴行で逮捕され、同年10月には日本相撲協会から解雇されており、廣川の遺族や角界との関係は途絶えています。

主な記録

通算成績: 498勝488敗19休 勝率.505
幕内成績: 218勝251敗11休 勝率.465
現役在位: 86場所
幕内在位: 32場所
三役在位: 1場所（小結1場所）
三賞: 1回（敢闘賞）
金星: 1個（栃ノ海より、1964年7月場所3日目）

改名歴

泰山（たいざん、1953年5月場所 - 1959年1月場所）
旺葉山（おうばやま、1959年3月場所 - 1960年5月場所）
廣川（ひろかわ、1960年7月場所 - 1969年1月場所）

年寄名跡変遷

押尾川 泰三（おしおがわ たいぞう、1969年1月 - 1971年9月）
東関 泰三（あずまぜき たいぞう、1971年9月 - 1977年12月）
* 宮城野 泰孝（みやぎの やすたか、1977年12月 - 1989年6月）

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