廣業館

広業館（廣業館）

広業館は、江戸時代に日向延岡藩が設立した藩校であり、藩士の子弟教育の中心的な役割を果たしました。

沿革

広業館の起源は、明和5年（1768年）に当時の延岡藩主であった内藤政陽が、延岡市本小路の川手口（現在の社会教育センターがある場所）に設立した学問所と武芸所に遡ります。この学問所では、朱子学者の山本与兵衛が監督を務め、白瀬道順が講師、佐久間左膳が儒学の指導を担当しました。

広業館は、全国的に見ても比較的早い時期に設立された藩校であり、日向国内の諸藩においては最初の藩校開設となりました。ちなみに、高鍋藩の明倫堂と都城の稽古館は安永7年（1778年）、佐土原藩の学習館は文政8年（1825年）、飫肥藩の振徳堂は天保2年（1831年）に設立されています。

その後、文武両道の教育機関として発展を続け、天保10年（1839年）には、当時の藩主であった内藤政義によって御用所の南側の空き地に移転・新築され、算術科が新設されました。算術科では長尾与一が指導を担当しました。

嘉永2年（1849年）には、再び元の場所へ新築移転し、西洋砲術科と習字科の2科が新たに設置されました。西洋砲術科では、江戸で西洋砲術を学んだ吉羽計馬が指導者として招かれました。

嘉永3年（1850年）、内藤政義は学寮を「廣業館」と改称し、藩校としての体制を整えました。明治維新直前の生徒数は300名に達し、そのうち284名が通学、16名が寄宿生として在籍していました。寄宿生のうち藩費生は3名、残りの13名は自費生でした。廣業館が寄宿生を受け入れるようになったのは、文久3年（1863年）に第8代藩主となった内藤政挙の時代からです。

廣業館は何度か場所を移転しましたが、明治5年（1872年）5月には旧御用所跡（現在の延岡市立岡富中学校グラウンド）に移転しました。しかし、同年10月の学制布告により、同年11月に廃校となりました。

廃校後

廣業館は廃校となりましたが、その教育精神は延岡の人々に受け継がれ、翌明治6年（1873年）には、原時行らの尽力によって廣業館の跡地に私立中学校「延岡社学」が創立されました。

延岡社学は明治8年（1875年）に「亮天社」と改称され、明治36年（1903年）に県立延岡中学校（現在の延岡高等学校）が創立されるまでの30年間、県内唯一の私立中学校として多くの人材を輩出しました。また、明治22年（1889年）に宮崎県立尋常中学校（現在の宮崎大宮高等学校）が設置されるまでの16年間は、宮崎県内唯一の中学校でした。

参考文献

『延岡亮天社の概況と周辺』(亮天社出版委員会、1986年)

関連項目

延岡藩
藩校
延岡高等学校

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