張宓

張宓（ちょう みつ）

張宓は、モンゴル帝国に仕えた漢人世侯の一人であり、済南を拠点とする大軍閥を築いた張栄の孫にあたります。字は淵仲といい、彼の事績は『山左金石志』に収録された「済南郡公張宓神道碑」に詳しく記されています。

生涯

張宓は、張栄の息子である張邦憲の子として生まれました。幼い頃から質子としてカイシャン（後の武宗クルク・カアン）に仕え、マングタイというモンゴル語名を与えられました。カイシャンが即位すると尚沐奉御の地位を授けられ、カイシャンに帝舜の廟を紹介し司法の重要性を説きました。山東地方で蝗害が発生した際には、舜の祠で祈祷を行い雨を降らせて蝗を死滅させ、その功績により金織衣を授けられました。

仁宗ブヤント・カアンの時代には、秩二品の官職を固辞し、三品の官職を授けられました。また、カアンから海東青鷹を賜るなど、厚い信任を受けました。その後、知南陽府に転任となりますが、兵馬司都指揮使に改められます。英宗シデバラが暗殺された南坡の変後には、首謀者の討伐を命じられました。彰徳路総管に任じられた際には、盗賊対策として村ごとに太鼓を設置し、盗賊の襲来を知らせ合う仕組みを構築し、被害を減少させました。

天暦年間には山北廉訪副使・保定路総管を歴任し、平江路に移った際には大量の訴訟案件を裁き、その有能さを示しました。元統2年（1334年）には吏部尚書、元統3年（1335年）には嶺北行省参知政事を務めましたが、病のため郷里に帰りました。至正3年（1343年）には山東東西道宣慰使に任じられますが、翌年自宅で亡くなりました。

張宓の墓は、一族の墓所である歴城にあります。


張宓は、モンゴル帝国に仕えながらも、民政に尽力し、地域社会に貢献した人物として評価されています。

済南張氏

張宓の一族は、済南を拠点とする有力な漢人世侯であり、モンゴル帝国の支配下で大きな影響力を持っていました。

参考文献

『愛宕松男東洋史学論集』第4巻 (元朝史)、三一書房、1988年
杉山正明『モンゴル帝国と大元ウルス』京都大学学術出版会、2004年
堤一昭「<論説>李璮の乱後の漢人軍閥 : 済南張氏の事例」『史林』第78巻第6号、1995年
『新元史』巻140列伝37張宏伝

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