張応昌 (明)

張応昌（ちょうおうしょう）：明末の動乱を生きた武将

張応昌は、明王朝末期の混乱期に活躍した武将です。生没年は不明で、楡林衛を本貫とします。

生い立ちと初期の軍歴

張応昌は、父である張承廕の息子として生まれました。祖父の張臣が務めていた職を継ぐはずでしたが、父が戦死したため、特例として都司僉書という役職に就きました。その後、遼東経略の楊鎬に見出され、左翼游撃として軍務に携わることになります。

1619年、楊鎬が後金討伐のために四路に分かれて出兵した際、張応昌は李如柏の軍に属しました。1621年には大同井坪参将に転じ、その後、延綏へと異動しました。しかし、1622年の秋、オルドス部が明の領内に侵入した際にこれを防ぐことができず、責任を問われて免官となります。

孫承宗の麾下へ

失意の中、張応昌は督師の孫承宗に召し出され、錦州の守備を命じられます。しかし、1625年、孫承宗が辞任し、後任の遼東経略となった高第が松州と錦州の防衛設備を撤去すると、張応昌もまた職を辞し、故郷へと戻りました。

農民反乱との戦い

1629年、張応昌は陝西総督の楊鶴に呼び戻され、定辺鎮将の代行を任されます。オルドス部の侵入を撃退した功績により、昌平副総兵に抜擢され、楊鶴の推薦で定辺に駐屯します。

1631年春、農民反乱軍の神一元が保安を占領すると、張応昌は左光先とともにこれを討伐し、神一元を斬りました。しかし、神一元の弟である神一魁が後を継いで反乱軍を率い、慶陽を包囲。張応昌は杜文煥とともに駆けつけ、慶陽の包囲を破ります。さらに、不沾泥が米脂を包囲した際には、王承恩と協力してこれを撃退しました。

楊鶴が神一魁を帰順させ、寧塞堡に住まわせるものの、その仲間である茹成名を殺害。これを恐れた張孟金と黄友才が神一魁を擁立して再び反乱を起こします。張応昌は延綏巡撫の張福臻の命を受け、騎兵を率いて討伐し、1700人以上を斬首。黄友才は逃亡しましたが、神一魁は抵抗を続けました。

洪承疇との協同

その後、洪承疇が楊鶴の後任として陝西総督に就任すると、張応昌は参政の戴君恩や総兵の曹文詔とともに神一魁の討伐を命じられます。張応昌は反乱軍を何度も破り、反乱軍は城を捨てて逃走。曹文詔と共に駙馬溝で反乱軍を撃破しました。翌春、黄友才を捕らえ、混天猴が宜君・鄜州を占拠した際には、追撃して破り、反乱軍の将である白広恩を負傷させます。

1633年8月、山西総兵官の馬士麟が病気で免官となると、張応昌が都督僉事に抜擢され、その後任となります。寧武の兵が逃亡しているとの報告を受け、3000人の兵を率いて寧武に向かい、その兵を掌握しました。同時期に王之臣が臨県を占拠し、現地勢力と結託して抵抗を続けます。山西巡撫の許鼎臣と宣大総督の張宗衡が軍を率いて攻撃するも、臨県は容易に陥落せず、王自用が遼州を占拠し、会城に迫ったため、許鼎臣が山西に戻らざるを得なくなると、張応昌が臨県奪回の任を負うことになりました。1633年春、反乱軍の約福が官軍を攻撃した際に、撫標中軍の陳国威が王之臣を逆撃すると偽って約福を誘い出し、斬首。その首を城下に掲げ、攻撃を強めると、臨県の反乱軍は降伏しました。

晩年と最期

関中において張応昌は勇名を馳せましたが、次第に反乱軍との戦闘を避けるようになります。宣大総督の張宗衡が何度も出撃を促しても応じなかったため、朝廷に上奏されました。張応昌は曹文詔と共に3ヶ月以内の反乱鎮圧を命じられますが、反乱軍を避け、良民を殺して功績を偽ったため、巡按御史の李嵩や兵科の祝世美に弾劾されます。崇禎帝は近侍を派遣し軍を監察させましたが、張応昌は平山の反乱軍を攻撃した際にも功績を偽って報告しました。劉允中、巡按御史の馮明玠、真定巡撫の周堪賡が連名で弾劾した結果、崇禎帝は功績によって罪を償わせることにしました。

1634年春、張応昌は霊宝で反乱軍を追撃し、多少の功績を挙げましたが、その後均州五嶺山で反乱軍に敗北し、自身も矢傷を負って河南に退却。弟の張全昌が宣府総兵官を務めていましたが、宣府から侵入の報告があったため、救援に向かいますが、再び功績を挙げられず、解任されて蟄居を余儀なくされました。

1635年、洪承疇が河南に出兵すると、張応昌は私軍を率いて従軍しました。信陽に入った後、反乱軍が大規模に陝西に侵入したため、張応昌は鄧玘や尤翟文と共に洪承疇の命を受けて漢江の南北を守備します。鄧玘が自殺すると、洪承疇は反乱軍が鳳県の棧道を通って略陽に侵入すると予測し、張応昌と尤翟文に鄖陽から興安・漢中に赴き、左光先や趙光遠らの軍勢と合流させます。

6月、艾万年と曹文詔が相次いで戦死し、反乱軍が全軍を挙げて西安に向かったため、洪承疇は張応昌と左光先に急報し、救援に向かわせます。8月、李自成が咸陽を陥落させると、その2日後に張応昌と左光先の軍勢が到着し、反乱軍を討って440人以上を斬り、軍師1人を捕獲しました。しかし、弟の張全昌が敗れて反乱軍に捕らえられ、その残兵が関中で略奪を繰り返したため、山西巡撫の呉甡が彼らを収容するように要請しましたが、張応昌はすでに病に倒れており、軍を率いることができませんでした。その後まもなく、病死しました。

張応昌は、明末の動乱期に数々の戦いを経験し、勇猛な武将として名を馳せましたが、次第にその戦いぶりは変化し、最終的には不遇な晩年を迎えることとなりました。

参考資料

* 『明史』巻239 列伝第127

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