張懋

張懋（ちょう ぼう）

張懋（1441年 - 1515年）は、明代の軍人であり、英国公の爵位を世襲した人物です。本貫は開封府祥符県にあります。彼は、明朝の成化帝、弘治帝、正徳帝の三代にわたり、重要な役職を歴任し、軍事面で大きな影響力を持っていました。

生涯

張懋は、張輔の息子として生まれました。1450年（景泰元年）5月、父の死を受けて英国公の爵位を継承しました。1473年（成化9年）、鄭王朱祁鍈が庶子をないがしろにしているとの報告を受けた成化帝は、張懋に鄭王を諭すように命じました。成化帝が西苑で騎射の腕前を披露した際、張懋は三発連続で的に命中させ、その功績により金帯を賜りました。

1474年（成化10年）には、五軍営の管掌を任されました。1475年（成化11年）、北元のマンドゥールン・ハーンが即位したことを受け、張懋は軍営の練兵を成化帝から命じられました。1478年（成化14年）、太子太傅に進みました。1479年（成化15年）には、遼東に赴任しました。その後、1486年（成化22年）には太傅、1491年（弘治4年）には太師へと昇進しました。

張懋は、京営の兵を動員して円通寺を建設する計画の中止を求める上奏を行いました。また、1492年（弘治5年）には、皇太子の冊立を求める上表を行いましたが、これは弘治帝によって却下されました。御史の李興と彭程が投獄された際には、張懋は彼らを弁護する上奏を行い、その正義感を示しました。1496年（弘治9年）には、提督団営の職務を務めました。1498年（弘治11年）には、柱国・太保に進みました。また、真武観の建設中止を請願するなど、民衆の負担を軽減しようとする姿勢も見られました。

1505年（弘治18年）には、『孝宗実録』の監修を担当しました。1506年（正徳元年）、張懋は文武百官を率いて、側近たちと遊興にふける正徳帝を厳しく諫めました。しかし、その一方で、張懋自身は豪奢な生活を送り、軍士たちからの搾取を行っていたため、御史や給事中から度々糾弾を受けました。

彼は、公位にあった期間は66年、兵権を掌握していた期間は40年に及び、勲臣の筆頭に数えられました。1515年（正徳10年）3月、75歳で亡くなりました。死後、寧陽王の位が追贈され、諡は恭靖とされました。しかし、1583年（万暦11年）には、朱希忠と共に王号を剥奪されています。

張懋の死後、孫の張崙が英国公の爵位を継承しました。

張懋は、その長いキャリアの中で、軍人としての才能を発揮し、明朝の安定に貢献しましたが、晩年の生活態度は批判の対象となりました。彼の生涯は、明代の政治と社会の複雑さを映し出す鏡とも言えるでしょう。

脚注

* この記事は、『明史』巻154 列伝第42を主な参考文献としています。

もう一度検索