御香宮神社

御香宮神社：歴史と信仰が息づく伏見の社

京都市伏見区御香宮門前町に鎮座する御香宮神社は、神功皇后を主祭神とする府社です。古くから「御香宮」「御幸宮」の通称で親しまれ、伏見区の伏見・桃山・向島地区の氏神として信仰を集めてきました。神功皇后の伝承から、安産の神としても広く知られています。

御祭神と由緒

主祭神は神功皇后で、相殿神として応神天皇、仲哀天皇をはじめ、仁徳天皇、高良大明神、宇倍大明神、瀧祭神、河上大明神、菟道稚郎子尊、白菊大明神など、複数の神々が祀られています。

創建の年代は定かではありませんが、貞観4年（862年）には社殿の修造が行われた記録が残っています。この年、境内から芳香を放つ水が湧き出し、これを飲んだ人々の病気が治癒したことから、「御香宮」の名を清和天皇から賜ったと伝えられています。この「御香水」は名水百選にも選ばれ、現在でも地元の人々が汲みに訪れる名水として知られています。また、筑紫国香椎宮からの勧請という記録も残っており、全国の「香」のつく神社との関連性においても重要な位置を占めています。

歴史の舞台：豊臣秀吉から徳川家康へ

豊臣秀吉は伏見城築城の際、御香宮神社を城内に移し、鬼門の守護神として崇敬しました。この時、社領三百石も寄進されています。現在も「古御香宮」としてその名残りを留めています。伏見宮貞成親王とも深い関わりがあり、境内は陵墓参考地にも指定されています。

慶長10年（1605年）、徳川家康によって元の位置に遷座され、板倉勝重を普請奉行として本殿が再建されました。表門は伏見城の大手門を移築したもので、歴史を感じさせる貴重な建造物です。

明治元年に勃発した鳥羽・伏見の戦いでは、御香宮神社が官軍（薩摩藩）の本営となりました。激しい戦闘の渦中にもかかわらず、神社の建物は無事だったと言われています。その後、府社に列せられています。

昭和時代には国道24号線の拡幅工事に伴い、境内の一部を道路用地として提供しました。その際に発見された小堀遠州ゆかりの庭園は、造園家・中根金作の手によって社務所の裏側に再現されています。

本殿には、菊の御紋、五七の桐紋、葵の御紋など、歴史を感じさせる紋様が施されています。

境内と見どころ

御香宮神社の境内には、多くの建造物や史跡が存在します。

本殿（重要文化財）： 慶長10年（1605年）に再建。平成2年の修理で、極彩色の彫刻が復元されました。
伏見の御香水： 徳川義直、徳川頼宣、徳川頼房の産湯に使われたと伝えられる名水。
拝殿（京都府指定有形文化財）： 寛永2年（1625年）に再建。中国の登龍門をモチーフにした極彩色彫刻が特徴です。
表門（重要文化財）： 元和8年（1622年）、徳川頼房が伏見城の大手門を寄進したもの。
庭園「遠州ゆかりの石庭」： 小堀遠州が伏見奉行所内に造った庭を再現したもの。
その他： 絵馬堂、九社殿、能舞台、稲荷社、弁天社、松尾社、東照宮、北門、北合祀社、大神宮、豊国社、東合祀社、土蔵、神輿蔵、九香軒、参集館、貴賓館、大杉社など、多くの建物が境内を彩ります。

境内の東側には、桃山天満宮が鎮座しています。御香宮神社の摂社ではなく、独立した神社です。

年中行事

御香宮神社では、一年を通して様々な神事が行われています。主な行事としては、若水神事、七種神事、御弓始め神事、例大祭、茅の輪神事、神能奉納、神幸祭、御火焚祭、醸造初神事などがあります。神幸祭の最終日には、神輿の巡行をはじめ、獅子若、猿田講社、武者行列、稚児行列などが氏子地域を巡行する盛大な行事となります。

文化財

御香宮神社には、多くの文化財が指定されています。重要文化財として本殿と表門、京都府指定有形文化財として拝殿、京都市指定天然記念物として御香宮神社のソテツなどが挙げられます。また、絵馬堂には、文久3年（1863年）と天和3年（1683年）に奉納された算額も残されています。

アクセス

近鉄桃山御陵前駅、京阪伏見[[桃山駅]]、JR奈良線桃山駅から徒歩でアクセス可能です。また、京都市営バス御香宮前バス停からも近く、公共交通機関を利用して容易に訪れることができます。

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