急行列車 (インド)

インドの急行列車：多様な種類と特徴

インドの鉄道は、その広大な国土を網羅する重要な交通手段です。特に長距離移動において重要な役割を担うのが急行列車です。インド鉄道が運行するこれらの列車は、速度、サービス、運賃など、様々な要素で多様な種類が存在します。

急行列車の概要

インドでは、1853年の鉄道開通以来、鉄道網が拡大を続けています。広大な国土を効率的に運営するため、長距離列車はインド鉄道が一元的に管理しています。インド鉄道が運行する長距離列車は基本的にすべて急行列車として扱われますが、その中でも最高速度160km/hで運行される一部の列車は「Superfast Express」として区別されます。

また、全席2階建ての「DOUBLE DECKER」や、全席冷房の「AC」などの名称が、車種や設備によって付与されます。このように、インドの急行列車は、運行速度、停車駅の数、設備の充実度などによって細かく分類されているのが特徴です。

急行列車の種類

インドの急行列車は、その運行形態やサービス内容によって多岐にわたります。以下に主な種類とその特徴を解説します。

高速急行（Superfast Express）

高速急行は、広軌路線で平均時速55km以上、狭軌路線で平均時速45km以上で走行する優等列車です。停車駅を少なく設定することで高速化を図り、運賃は他の急行列車よりも高めに設定されています。

ラージダーニー急行: 停車駅が少ない夜行急行列車。1969年に運行を開始し、インドの主要都市を結ぶ。
シャターブディー急行: 停車駅が少ない昼行急行列車。1988年に運行を開始し、主要都市間を日帰りで結ぶ。
ドゥロント急行: インド鉄道初のノンストップ列車。2009年に運行を開始し、ベンガル語で「速い」を意味する「Duronto」が名称の由来。
ガティマン急行: インド最速の昼行急行列車。最高速度160km/h、平均速度91km/hを誇り、2016年に運行を開始した。
テジャス急行: 自動扉、監視カメラ、近代的なトイレを備えた専用客車を使用。2017年から運行を開始し、一部列車はIRCTCによって運営。
ヴァンデ・バーラト急行: 最高速度160km/hで運行する長距離向け電車。2019年2月に運行を開始し、インドの高速鉄道の先駆けとなる。
アムリット・バーラト急行: 2024年1月に本格的な営業運転を開始した、冷房を搭載しない安価な高速長距離列車。

急行（Express）

急行は、普通列車に比べて停車駅が少なく、優先的に走行する列車です。平均速度は55km/h前後です。

スワルナ・ジャヤンティ急行: インド独立50周年を記念して1997年に運行を開始。「ゴールデン・ジュビリー」を意味する名称。
ジャン・シャターブディー急行: シャターブディー急行よりも安価で利用可能な列車。2002年に運行を開始し、「庶民」を意味する「Jan」が名称に由来。
ジャン・サダラン急行: インド初の全席自由席の長距離列車。2004年に運行を開始し、予約不要で利用可能。
サンパルク・クラーンティ急行: 2004年に設定。ニューデリーと各地の州都を結び、ラージダーニー急行を補完する役割も持つ。冷房はないが安価で利用可能。
ガリブ・ラス急行: 安価な冷房付き列車として2006年に運行を開始。低価格で快適な移動を提供。
AC急行（AC Express）: 主要都市を結ぶ全車冷房完備の列車。運賃は比較的安価だが、一部サービスは別途料金が必要。2008年に運行開始。
ユヴァ急行: 若年層や低所得者層向けの安価な冷房付き列車。2009年に運行を開始し、幅広い層に利用されている。
ラジャラニ急行: 2011年に運行を開始。州都と地方都市を結び、「藩の女王」を意味する名称。
カヴィ・グル急行: 詩人ラビンドラナート・タゴールの生誕150周年を記念して名付けられた列車。2011年から運行。
ヴィヴェック急行: ヨガ指導者ヴィヴェーカーナンダの生誕150周年を記念。ディブルガル-カンニヤークマリ間は、インド最長距離を走る列車。
ダブルデッカー急行: 2階建て客車を使用した急行列車。2011年10月には冷房付き列車も登場し、定員を増やして運行。
スヴィダ急行: 利用客が多い区間に設定され、需要に応じて運賃が変動するダイナミック・プライシング制を採用。2014年から運行。
マハマナ急行: 内装・外装の快適性や安全性を向上させた「モデル・レーキ」客車を使用。2016年から運行。
フムサファール急行: 最新設備を搭載した寝台車で構成された列車。2016年から運行を開始し、「旅仲間」を意味する名称。
アンチョダヤ急行: 全席自由席で予約不要の都市間列車。2017年から運行を開始し、バイオトイレや監視カメラを装備。
ウダイ急行: ビジネス客や旅行客向けに内装を改良した2階建て客車を使用。2018年から運行し、「素晴らしい冷房付き2階建て旅行列車」の略称が名称の由来。
インターシティ急行: インドの都市間を結ぶ急行列車の総称。フライング・ラニーなど、固有の名称を持つ列車も多い。

郵便急行（Mail Express）

元々は郵便車を連結した長距離列車でしたが、現在では平均時速50km/h前後で走行する一部の優等列車を指します。「○○・メール」という愛称で親しまれています。

国際列車

インド鉄道は、一部の急行列車を近隣諸国へ乗り入れる国際列車として運行しています。

マイトリー急行: コルカタ - ダッカ間を結ぶ列車。
バンダン急行: コルカタ - クルナ間を結ぶ列車。
* ミタリ急行: シリグリ - ダッカ間を結ぶ列車。

かつてはパキスタンへ向かう急行列車も存在しましたが、両国間の緊張により現在は運行を停止しています。

急行列車の名称

インドの急行列車は、基本的に終点の駅名で表されます。例えば、ニューデリー駅からハウラー駅へ向かう列車は「ハウラー急行」となります。さらに詳細に区別するため、始点の駅名も加え「ニューデリー - ハウラー急行」と呼ばれることもあります。

また、特定の急行列車には固有名が付けられています。例えば、ニューデリー駅からガヤー駅へ向かう列車は、仏教の釈迦の悟りにちなんで「マハーボーディ（摩訶菩提）」と名付けられています。始点と終点の駅名を含めて「ニューデリー - ガヤー・マハーボーディ急行」と呼ぶこともあります。

急行列車の多様な名称

インドの急行列車には、終着駅名だけでなく、様々な由来を持つ名称が存在します。州名や沿線の地名、河川名、山岳名、海岸名、地形名、歴史的な国や都市名、遺跡名、産業名、仏教関連の名称、神様に関する名称、歴史上の人物名、歴史的な標語や書物名など、その種類は多岐にわたります。これらの名称は、列車の個性を際立たせると共に、インドの豊かな文化と歴史を反映しています。

まとめ

インドの急行列車は、単なる移動手段としてだけでなく、その多様な種類や名称を通じて、インドの歴史や文化、そして人々の生活を映し出す鏡のような存在です。インドを旅行する際には、ぜひこれらの急行列車を利用し、その魅力を肌で感じてみてください。

もう一度検索