息速別命

息速別命（いこはやわけのみこと/おきはやわけのみこと）

息速別命（生没年不詳）は、古代日本の皇族で、第11代垂仁天皇の皇子です。

名称

息速別命は、文献によって以下のように表記が異なります。

伊許婆夜和気命（『古事記』）
池速別命（『日本書紀』、『先代旧事本紀』「天皇本紀」）
息速別命（『日本三代実録』、『新撰姓氏録』）
息速別皇子（『続日本紀』）

また、『続日本後紀』に見える「伊枳速日命（いきはやひのみこと）」を同一人物とする説もあります。

系譜

息速別命は、垂仁天皇と丹波道主王の娘、薊瓊入媛（あざみにいりひめ）の間に生まれました。同母妹に稚浅津姫命がいます。

『先代旧事本紀』には、同母弟として五十速石別命、五十日足彦命がいたという異伝も記されています。妻子については不明な点が多く、近世の系図に宇礼葉別命や武伊賀都別命を子とするものがあります。

記録

『古事記』や『日本書紀』には、息速別命の事績に関する記述はほとんどありません。『新撰姓氏録』には、幼少の頃に父である垂仁天皇によって伊賀国阿保村に宮室が築かれ、同村が封邑として与えられたと記されています。

墓

息速別命の墓は、三重県伊賀市阿保にある西法花寺古墳（方墳）に治定されています。この古墳は、古墳時代中期末から後期初頭（5世紀末葉-6世紀初期頃）に築造されたと推定されています。しかし、この治定には異論もあり、後裔氏族（阿保氏）の墳墓であるとする説や、大村神社境内にある古墳群が墓であるとする説も存在します。

後裔氏族

息速別命は、『古事記』では沙本穴太部之別、『新撰姓氏録』では阿保朝臣の祖とされています。

沙本穴太部： 大和国添上郡沙本を拠点とした豪族。安康天皇の御名代である穴太部が各地に存在しました。
阿保氏： 伊賀国伊賀郡阿保村を治めたとされる豪族。伊賀国造の一族とも推定されています。

阿保氏は、允恭天皇の時代に「阿保君」の姓を賜り、後に「阿保朝臣」に改姓しました。

その他、時統氏や下野国の若田氏にも後裔とする伝承があります。また、小槻氏も息速別命の後裔であるという記述が見られます。

伝承

勝道上人の伝記『補陀洛山草創建立記』には、息速別命が勅命を受けて伊勢神宮を奉斎した後、東国に下向し、下毛野国の若田氏の祖になったという伝承が記されています。

谷川健一は、この伝承と鍛冶職との関連性を指摘しています。

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