意富比神社

意富比神社（おおひじんじゃ）

千葉県船橋市に位置する意富比神社は、地元では「船橋大神宮」として親しまれている古社です。この神社は、延喜式にも記載される由緒ある神社で、その歴史は古く、日本武尊の東征にまで遡ると伝えられています。

神社の祭神

主祭神は天照皇大御神です。しかし、元々は地方の太陽神である「意富比神（大日神）」が祀られていました。この地は東京湾に面しており、古くから漁民の信仰を集めていました。その後、伊勢神宮の祭神である天照大神が合祀され、現在に至ります。

社名の由来

「意富比」という社名の由来には諸説あります。

大火あるいは大炊の意で食物神とする説
夕日を真正面に受ける高台にあることから夕日とする説
古代の有力豪族である意富氏の氏神とする説
大日の意で、この地方の農民が信仰してきたお天道様（太陽神）とする説

これらの説から、この地が古くから太陽信仰と深く結びついていたことが伺えます。

歴史

社伝によれば、景行天皇40年、日本武尊が東征の際に当地で東国平定を祈願したのが神社の始まりとされています。当時、日照りに苦しんでいた住民のために日本武尊が雨乞いをすると、雨が降り出したと伝えられています。その後、この地は伊勢神宮に寄進され、御厨（夏見御厨、または船橋御厨）となり、その守護として天照大神が祀られました。しかし、御厨の衰退とともに神明社も廃れ、意富比神社に合祀されました。時が経つにつれて、天照皇大神への信仰が強くなり、次第に意富比神社の社名は忘れられ、「船橋神明」や「船橋大神宮」と呼ばれるようになりました。

戦国時代までは、この地域で勢力を保っていた千葉氏系の豪族富氏が宮司を務めていました。現在でも千葉姓に改名した同族が宮司を務めています。中世には多くの文書が残されていましたが、明治維新の戊辰戦争で社殿とともに焼失し、現在残っているのは一部の古文書のみとなっています。明治6年に本殿、明治22年には拝殿が再建されました。明治5年には県社に列格し、延喜式神名帳に記される意富比神社の名に復しました。

朝廷や将軍家からの崇敬も篤く、平将門、源頼朝、徳川家康などが社領の寄進や社殿の造営・改修を行いました。境内にある常盤神社には家康の歯を納めた家康木造が安置されています。近代では、明治天皇、大正天皇、昭和天皇など、歴代の天皇も参拝に訪れています。

境内

境内には多くの摂末社があります。

常盤神社（摂社）：日本武尊、徳川家康公、徳川秀忠公を祀る。
外宮（摂社）：豊受姫大神を祀る。
八雲神社（摂社）：須佐之男命を主祭神とし、大己貴神と奇稲田姫命を配祀する。
天之御柱宮（末社）：護国の英霊を祀る。
大鳥神社（摂社）：日本武尊を祀る。
八剱神社・八坂神社（摂社）：共に須佐之男命を祀り、神輿に祀られている。
船玉神社（末社）：天鳥船命と住吉命を祀る。社殿は船の形を模している。
浅間神社（末社）：木花佐久夜毘売命を祀り、境内北部の高台に鎮座。

文化財

船橋大神宮灯明台：千葉県指定有形民俗文化財。
神楽：船橋市指定無形民俗文化財。

行事

船橋大神宮の奉納相撲

毎年10月20日に行われる奉納相撲は、1590年の徳川家康の上覧相撲に起源を持つとされています。家康が船橋で鷹狩りを行った際に、相撲に興じる子供たちを見て、これを船橋大神宮に奉納したのが始まりと伝えられています。この素人相撲は、力自慢が集まることで知られ、東葛地域出身の力士の育成に貢献しています。かつては、漁師などの熱狂的な見物客が集まり、大いに盛り上がったと言われています。

交通

京成電鉄本線大神宮下駅より徒歩5分
JR総武線船橋駅より徒歩約10分

関連神社

意富比神社の分社として、以下の神社が存在します。

米ヶ崎町 恵富比神社：千葉県船橋市米ヶ崎町332
東町 意富比神社：千葉県船橋市東町802

古文書

意富比神社に関連する古文書としては、以下のようなものがあります。

日本三代実録
延喜式神名帳
吾妻鏡
神鳳鈔
後北条氏朱印状
北条氏康書状
千葉胤富書状
船橋御厨六ケ郷田数之事
北条家制札写
上杉家制札写
[里見氏]禁制写
里見義康禁制写
万栄判物

参考文献

船橋市郷土資料館, 絵はがき写真に残された明治～大正～昭和-, 平成17年3月23日
『船橋市史』（船橋市役所、1998年）
郷土出版社,祝市制施行70周年～船橋の100年～, 平成19年2月5日
斎藤幸雄「巻之七 揺光之部 意富日神社」『江戸名所図会』 4巻、有朋堂書店、1927年、365-375頁。

関連項目

市川・船橋戦争
芝大神宮
伊勢山皇大神宮
所澤神明社

外部リンク

意富比神社・船橋大神宮

意富比神社は、その長い歴史の中で、地域の信仰の中心として、また人々の心の拠り所として、今もなお大切にされています。

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