慕容塵

慕容塵（ぼよう じん、生没年不詳）は、五胡十六国時代の前燕に仕えた人物で、昌黎郡棘城県の出身です。

生涯

元璽4年（355年）10月、慕容塵は撫軍将軍の慕容恪、司空の陽騖とともに、青州の段龕討伐に参加しました。この戦いで前燕軍は勝利し、勢力を拡大しました。

元璽5年（356年）11月、前燕が段龕を破り、青州を領有すると、慕容恪は慕容塵を広固に鎮守させました。このことから、慕容塵は慕容恪から厚い信頼を得ていたことがうかがえます。

光寿2年（358年）12月、東晋が侵攻を開始すると、当時青州刺史に任じられていた慕容塵は、司馬悦明を泰山の救援に派遣しました。司馬悦明の活躍により、東晋の徐州刺史荀羨を打ち破り、前燕は山茌を奪還しました。

建熙2年（361年）4月、東晋の建威将軍桓豁が、鎮南将軍に任じられていた慕容塵が守る許昌を攻めました。しかし、慕容塵は桓豁に敗れ、許昌を失陥してしまいました。この敗戦は、慕容塵にとって大きな痛手となりました。

建熙4年（363年）10月、慕容塵は長平において、東晋の陳留郡太守袁披を破りました。この勝利により、慕容塵は失地回復に向けて勢いを取り戻しました。

建熙5年（364年）4月、前燕は許昌・汝南郡・陳郡を攻略し、慕容塵を許昌に駐屯させました。これにより、慕容塵は再び重要な拠点である許昌の守備を任されることとなりました。

建熙8年（367年）4月、慕容塵は竟陵へ侵攻しましたが、東晋の竟陵郡太守羅崇に敗れました。この敗戦以降、慕容塵の事績は史書に記されていません。

慕容塵は、前燕の領土拡大に貢献した一方で、東晋との戦いにおいて敗北も経験しました。彼の生涯は、五胡十六国時代の激しい戦乱を物語るものと言えるでしょう。

参考文献

『晋書』巻8、巻74、巻110、巻111
『資治通鑑』巻100、巻101
* 『十六国春秋』巻28

もう一度検索