拓跋鬱律

拓跋鬱律（たくばつ うつりつ）

拓跋鬱律（? - 321年）は、五胡十六国時代の代国の王であり、拓跋弗の子として生まれました。北魏の道武帝より太祖の廟号と平文皇帝の諡号を追贈されています。

生涯

拓跋鬱律は、容貌雄壮で威信があり、謀略に富んでいました。310年、伯父の拓跋猗盧が部族を統治していた頃、白部大人が反乱を起こし西河に入りました。これに呼応して鉄弗部の劉虎が雁門で挙兵し、劉琨が守る新興・雁門の2郡を攻めました。劉琨は拓跋部と同盟関係にあったため、拓跋猗盧は拓跋鬱律に将騎2万を与えて劉琨を助けさせました。拓跋鬱律は白部を打ち破り、その部族を屠りました。さらに劉虎を破り、その陣営を攻め落とすと、劉虎は朔方へ逃れました。

316年、拓跋猗盧とその子の拓跋普根が相次いで亡くなると、拓跋鬱律が代王に擁立されました。318年6月、鉄弗部の劉虎が黄河を渡り再び代国西部に侵攻してきます。7月、拓跋鬱律は軍を率いて迎撃し、これを打ち破りました。劉虎は単騎で包囲を突破して逃走し、劉虎の従弟である劉路孤は部落を率いて帰順してきたため、拓跋鬱律は娘を与えました。

その後、拓跋鬱律は西へ向かい烏孫の故地を攻略し、東へ向かい勿吉以西の地区を併合しました。当時の拓跋部の兵馬は強壮であり、騎射ができる兵は百万にのぼったと言われています。代国は周辺部族を圧倒し、北方に覇を唱えました。

同年、前趙の劉曜が晋帝司馬鄴を殺害したと聞くと、拓跋鬱律は大臣たちへ「今、中原は乱れ、支配者が不在である。天は我に救援せよと言っているのか」と言いました。劉曜は代国へ使者を派遣して和親をはかりましたが、拓跋鬱律はこれを受け入れませんでした。319年、石勒は自ら趙王を号すると、代国と和親をはかり兄弟となることを請いましたが、拓跋鬱律は使者を斬り捨て国交を断絶しました。

幽州刺史の段匹磾の兵民は飢餓のため離散し、薊を守る力がなくなり上谷に移動しようとしました。拓跋鬱律はこれを攻撃し敵軍を壊滅させ、段匹磾は妻子を棄てて楽陵郡に奔り、冀州刺史の邵続を頼りました。320年には涼州刺史の張茂の使者が代国に朝貢しました。

321年、東晋の元帝が代国へ使者を送り爵位を与えましたが、拓跋鬱律はこれを断りました。拓跋鬱律には、南方を平定しようという志があったとされています。

しかし、伯母の惟氏は拓跋鬱律が部族の心を得て勢力が強大であるため、自らの子が後継に立てられないことを恐れました。彼女は拓跋鬱律と諸大人を殺害し、死者は数十人に及んだとされます。その後、惟氏の子である拓跋賀傉が即位しました。

宗室

后：王氏
男子：
拓跋翳槐（長男）
拓跋什翼犍（次男）
拓跋屈（三男）
拓跋孤（四男）
女子：
拓跋氏（劉路孤の妻）
拓跋氏（賀蘭紇の妻）

参考文献

『魏書』(帝紀第一、列伝第一、列伝第二)
* 『資治通鑑』(巻九十・巻九十一)

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