文帝 (西魏)

文帝（西魏）

文帝（ぶんてい）は、北朝時代の西魏初代皇帝であり、姓は元、諱は宝炬（ほうきょ）と称しました。彼は北魏の京兆王元愉の三男として生まれました。

生涯

即位前

文帝の父である元愉が冀州で反乱を起こし敗死したため、文帝は兄弟と共に宗正寺に幽閉されるという不遇な時期を過ごしました。宣武帝の崩御後に幽閉を解かれ、正光年間には直閤将軍の号を受けました。孝明帝と共に霊太后の寵臣を殺害しようと企てましたが、事が露見し免官となりました。その後、邵県侯、南陽王と封じられ、太尉に上り詰めましたが、事件に連座し驃騎大将軍に降格、王邸に蟄居させられるなど、波乱万丈な人生を送りました。孝武帝が宇文泰を頼り長安へ逃れると、文帝もこれに従い、太宰・録尚書事に任じられました。

即位後

534年末、孝武帝が宇文泰によって毒殺されると、翌535年1月、宇文泰に擁立され皇帝に即位、元号を大統と改めました。当時、洛陽では高歓が文帝の従甥にあたる元善見（孝静帝）を擁立しており、これにより文帝の西魏と孝静帝の東魏が並立する状況となりました。しかし、両皇帝は傀儡に過ぎず、実権はそれぞれ宇文泰と高歓が掌握していました。

文帝の治世初期は、荊州を東魏の侯景に奪われ、宇文泰の旧本拠地であった夏州を失うなど、軍事的に不利な状況が続きました。536年頃には関中に大飢饉が発生し、多くの死者を出す惨状を呈しました。建国当初の危機は、537年に宇文泰が沙苑の戦いで高歓を破った頃から、ようやく克服の兆しを見せ始めました。一時は旧都洛陽を奪還するなど善戦しましたが、西魏と東魏の戦線は次第に膠着状態に陥りました。

547年には侯景の降伏を受け入れ、河南大行台に任じましたが、その年のうちに再び離反されました。

551年3月、文帝は長安の乾安殿で崩御しました。

宗室

后妃

乙弗皇后（乙弗瑗の娘、母は孝文帝の娘淮陽公主で、文帝の従妹）
郁久閭皇后（郁久閭阿那瓌の娘）

男子

元欽（廃帝）
元謹（晋王）
元戊（武都王）
拓跋廓（恭帝）
拓跋寧（趙王）
元倹（梁王）
拓跋儒（燕王）
元公（呉王）

女子

金明公主（尉遅迥に嫁ぐ）
安楽公主（王勵の子の王弼に嫁ぐ）
広寧公主（于謹の子の于儀に嫁ぐ）
義陽公主（竇毅の子の竇照に嫁ぐ）
元胡摩（五女、晋安公主、のち北周の孝閔帝宇文覚の皇后）
襄楽公主（韋世康に嫁ぐ）
公主（宇文泰の子の宇文震に嫁ぐ）
公主（辛威に嫁ぐ）

文帝の生涯は、西魏という新王朝の黎明期を支え、激動の時代を生き抜いた皇帝としての苦悩と決断に満ちていました。

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