日下部氏

日下部氏（くさかべうじ）について

日下部氏は、日本の古代から続く氏族の一つです。家紋としては、三ッ盛木瓜、蔦、三つ銀杏などが用いられています。

起源

「くさかべ」という名称は、部民制や朝臣姓に関連するもので、日部、＃部（＃は「日」の下に「下」）、日下部、草香部、草部、草加部、草下部、草壁、苅部、早部、久坂部など、様々な表記が見られます。これらの氏族は、日向国、淡路国、丹国、和泉国、陸奥国など、日本各地に分布しており、大宰府日下部氏、豊後国日下部連、筑後国草壁氏、河内国草刈部氏（尾張国日下部氏の祖先とも）、伊予国草部氏などが存在しました。その分布は、筑紫島から東北地方にまで及んでいます。また、犬養部も同祖であるとされています。

起源に関する諸説

日下部氏の起源については、複数の系統が存在します。

饒速日命（にぎはやひのみこと）の孫・彦湯支命（ひこゆきのみこと）の後裔説: 物部氏の一族とする説です。
火闌降命（ほあかりのみこと）の後裔説: 薩摩国の隼人族の祖であり、犬養部と同祖とされます。
開化天皇の皇子・日子坐王（ひこいますのみこ）の後裔説: 因幡国で朝臣姓「草香部」を名乗ったとされます。
開化天皇の孫・山代之大筒木真若王（やましろのおおつつきまわかのみこ）の後裔説: 但遅麻国造族の日下部君がこの系統に当たるとされています（『古事記』、『大日本史』）。
開化天皇の孫・狭穂彦王（さほひこのみこ）の後裔説: 甲斐国造族の日下部直、河内の日下部連がこの系統に当たります。
仁徳天皇の皇子・大草香皇子（おおくさかのみこ）の後裔説
孝徳天皇の孫・表米親王（ひょうまいしんのう）の後裔説: 日下部宿禰の後裔とされています（『朝倉始末記』）。
大彦命（おおびこのみこと）の子・紐結命（ひもゆいのみこと）に始まる日下連説
若多祁命（わかたけのみこと）の子・田狭乃直（たさのあたい）に始まる伊豆国造族の日下部直説
天日和伎命（あめのひわきのみこと）の6世孫・保都祢命（ほつねのみこと）の末裔である日下部首説

これらの説のうち、3、4、5の系統は、いずれも彦坐王の後裔とされています。山代之大筒木真若王後裔説と孝徳天皇後裔説は、表米以降の系譜がほぼ同じですが、部民制度の成立を考慮すると、特に孝徳天皇後裔説には疑問点が多いとされています。

また、雄略天皇の皇后であり、仁徳天皇の皇女でもある草香幡梭姫（くさか はたびめ）の生活に必要な資材を管理した部民が、この皇后の名にちなんで「日下部」と呼ばれるようになったとする説もあります。この部民は各地に配置され、屯田兵のような軍事集団としての性格も持っていたとされています。

「くさかべ（日下部）」の表記は、和歌の枕詞である「日の下の草香（ひのもとのくさか）」から派生したとされています。同様の例としては、「長谷の泊瀬」、「春日の滓鹿」、「飛ぶ鳥の明日香」などがあります。

まとめ

日下部氏は、古代日本の多様なルーツを持つ氏族であり、その歴史は複雑です。各地に広がり、様々な形で日本の歴史に関わってきました。その起源を辿ることは、古代日本の社会構造や歴史を理解する上で重要な鍵となります。

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