日日の背信

日日の背信

概要

『日日の背信』は、作家・丹羽文雄による長編小説で、1956年から1957年にかけて毎日新聞に連載されました。その後、単行本化、文庫化され、映画やテレビドラマなど、様々なメディアで展開されました。特に、テレビドラマ版は、昼ドラマというジャンルを確立した作品として知られています。

あらすじ

物語の主人公は、経済雑誌を発行する出版社の社長、土居広之です。彼は、長年病床にある妻・知子を献身的に愛していましたが、湯河原の温泉宿で、未亡人となった屋代幾子と出会い、その情熱的な魅力に惹かれていきます。

幾子は、満州からの引揚者で生活に困窮しており、宝石貴金属商の社長である六角庫吉の愛人として生計を立てていました。広之は、病気の妻を愛しているという自覚と、幾子への抑えられない感情の間で苦悩し、やがて妻への裏切りを重ねていきます。この、愛と欲望、そして背信を描いた物語が、タイトルの「日日の背信」を象徴しています。

映画

1958年には、佐田啓二、岡田茉莉子らが出演し、映画版が公開されました。監督は中村登が務め、当時の社会情勢や人間の心の機微を丁寧に描いています。

キャスト

土居広之：佐田啓二
土居知子：桂木洋子
屋代幾子：岡田茉莉子
六角庫吉：伊藤雄之助
植田信一：小林きよし
知子の母・つね代：浦辺粂子
六角たか：沢村貞子
宮川すが子：小林トシ子
岸徳太郎：内藤武敏
知子の兄・重蔵：三井弘次
バーのマダム：桜むつ子
山の宿の女中：水上令子
煙草店の女店員・まり子: 川口のぶ
煙草店の女店員：山田百合子
煙草店の女店員：町田祥子
警官：高木信夫
六角の女：大津絢子

スタッフ

監督：中村登
製作：深沢猛
脚色：斎藤良輔
撮影：長岡博之
音楽：黛敏郎
美術：熊谷正雄
編集：浜村義康
録音：大村三郎
照明：小泉喜代司
スチル：堺謙一

テレビドラマ

『日日の背信』は、複数回テレビドラマ化されています。特に1960年版は、昼ドラマの先駆けとして、高い視聴率を記録し、大きな話題となりました。

1960年版

フジテレビで放送されたこのドラマは、池内淳子と原保美が主演を務めました。当時としては破格の制作費が投入され、斬新な演出が視聴者を魅了しました。特に、アップの映像を多用した演出は「アップの太郎」と異名をとるほどでした。また、大胆な濡れ場演出も話題を呼び、昼ドラというジャンルを確立するきっかけとなりました。池内淳子は、このドラマを機に「よろめき女優」として人気を博しました。

キャスト

屋代幾子：池内淳子
土居広之：原保美
土居知子：喜多道枝
六角庫吉：若宮忠三郎
稲野和子
臼井正明
山岸美代子
ナレーター：矢島正明

スタッフ

演出：岡田太郎
脚本：浅川清道
音楽：宮内国郎

1967年版

東海テレビ制作の昼ドラマ枠で放送された作品です。朝丘雪路と安井昌二が主演を務めました。

キャスト

屋代幾子：朝丘雪路
土居広之：安井昌二
土居知子：稲垣美穂子
六角庫吉：山茶花究
風見章子
富田浩太郎
都築克子
新間正次
伊藤友乃
内田藍子

スタッフ

演出：大西博彦
脚本：砂田量爾
音楽：山下毅雄

作品の意義

『日日の背信』は、単なる不倫劇ではなく、人間の欲望や葛藤、そして愛の多様性を描いた作品として、長く愛されています。特に、テレビドラマ版は、その後の日本のテレビドラマに大きな影響を与え、昼ドラマというジャンルを確立した功績は大きいと言えるでしょう。

参考文献

村上七郎『ロングラン マスコミ漂流50年の軌跡』扶桑社、2005年6月。ISBN 978-4594049478。
こうたき てつや『昭和ドラマ史』映人社、2019年2月。ISBN 978-4871002394。

外部リンク

『日日の背信』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
* 『丹羽文雄作品集. 第8巻 (日日の背信)』 - 国立国会図書館デジタルコレクション

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