日本とエチオピアの関係

日本とエチオピアの関係は、19世紀末に遡ります。当時、西洋列強によるアフリカ分割が進む中、1896年のアドワの戦いでエチオピア帝国がイタリア王国を破ったこと、そして1905年の日露戦争で大日本帝国がロシア帝国を破ったことは、共に有色人種が白色人種を破った例として、世界各地で注目されました。この出来事は、汎アフリカ主義や汎アジア主義を盛り上げ、両国間に連帯感を生む要因となりました。また、当時のエチオピア帝国と日本の皇室は、世界でも最古級の皇室であり、縁談の話もあったことから、君主間の連帯感も存在したと考えられます。

前史

江戸時代には、1675年にアルメニア人商人ホジャ・ムラードが「エチオピア諸王の大使」としてシマウマを献上した記録が残っています。18世紀には、西川如見が『増補華夷通商考』でエチオピアを「アビシニイ」として紹介しましたが、その内容は当時のヨーロッパの黒人蔑視の考えを引き継いだものでした。明治維新後には、福沢諭吉が『世界国尽』で「あびしにあ」を紹介しています。また、第一次エチオピア戦争の際、日本政府はエチオピアに関心を示し、軍事視察を提案しましたが、イタリア側から断られました。

第一次世界大戦以後

第一次世界大戦後、エチオピアは国際連盟に加盟するために、日本代表の杉村陽太郎と会談しました。1923年に加盟が認められた後、エチオピアのタファリ・マコネン摂政は、帰路に日本の領事と会見し、両国の経済関係樹立を模索しました。1927年には「日本・エチオピア通商友好条約」が締結されましたが、条約の内容が不明瞭であったため、公布までに時間がかかりました。また、同年に外務省から東アフリカ経済事情調査隊が派遣されています。1930年にハイレ・セラシエ1世が皇帝に即位すると、日本も特使を派遣して祝意を伝えました。ハイレ・セラシエ1世は、日本の大日本帝国憲法を参考にエチオピア初の成文憲法を制定しました。

1931年には、エチオピアの使節団が日本を訪問し、各地で歓迎を受けました。これを機に、両国間の貿易が始まり、日本からの輸出品が市場を席巻しました。また、皇室間の縁談も持ち上がりましたが、ヨーロッパ諸国の干渉により破談となりました。この時期には、エチオピアに関する書籍やレコードも発売されるなど、両国間の関心が高まりました。しかし、イタリアのムッソリーニは、エチオピアへの侵攻を計画し、日本との関係が悪化しました。

第二次イタリア・エチオピア戦争と日本

イタリアは、1935年にエチオピアに侵攻し、第二次エチオピア戦争が勃発しました。日本国内では、エチオピアを支持する世論が強まりましたが、日本政府は中立を表明しました。しかし、日本はエチオピアに公使館を開設し、自国の権益を保護しました。1936年にエチオピアがイタリアに占領されると、日本の世論の関心は薄れ、日本政府はイタリアを承認しました。エチオピアの敗戦後、日本は日独伊防共協定を結び、イタリアに接近しました。1942年、エチオピアは日本に宣戦布告しましたが、両国間で実質的な交戦は起こりませんでした。

第二次世界大戦以後

第二次世界大戦後、エチオピアは朝鮮戦争に国連軍として参戦しました。1951年のサンフランシスコ講和条約に調印し、1955年に日本との国交を回復しました。1956年にはハイレ・セラシエ1世が訪日し、戦後初の国家元首の訪日となりました。1957年には「日本・エチオピア友好通商条約」が調印され、両国は相互に大使館を開設しました。また、日本庭園の造営や政治顧問団の派遣も行われました。1960年には、明仁皇太子と美智子皇太子妃がエチオピアを訪問しています。1960年のローマオリンピックでエチオピアのアベベ・ビキラが金メダルを獲得し、日本でも有名になりました。

1970年にはハイレ・セラシエ1世が二度目の訪日を果たし、1971年には「日本エチオピア協会」が発足しました。1974年の社会主義革命後、両国関係は一時冷却化しましたが、冷戦終結後は、日本のODAを通じて関係が改善しました。近年では、アフリカ開発会議などの国際会議で両国間の交流が行われ、2015年にはエチオピア航空がアディスアベバ〜成田線を開設するなど、経済的な結びつきも強まっています。

現在、日本には178人のエチオピア人が在留し、エチオピアには450人の日本人が在留しています。両国間では、大使館を通じて外交関係が維持されています。

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