日本とトルコの関係

日本とトルコの関係は、オスマン帝国時代に遡る長い歴史を持っています。この関係は、単なる外交関係を超え、相互の尊重と友情に基づいた特別な繋がりを築いてきました。

歴史

前史

15世紀、オスマン帝国の勢力拡大はヨーロッパ諸国に大きな影響を与えました。アジアからの香辛料貿易ルートが遮断されたことで、ヨーロッパは新たな交易路を模索し始めました。これが、ポルトガルやスペインによる喜望峰回りの航路開拓につながり、アジアへの進出を促しました。1543年の鉄砲伝来による日本と欧米の接触は、オスマン帝国の勢力拡大が間接的な要因であったと言えるでしょう。

1887年、小松宮彰仁親王がヨーロッパ訪問の際にイスタンブールに立ち寄ったことを受け、1890年にオスマン帝国のアブデュル・ハミト2世はフリゲート艦「エルトゥールル」を日本へ派遣しました。使節団は明治天皇に親書を渡した後、帰国の途につきましたが、和歌山県沖で台風に遭遇し座礁沈没。オスマン・パシャを含む500名以上の乗組員が亡くなるという悲劇に見舞われました。

この時、紀伊大島の住民が献身的な救助活動を行い、69名を救出しました。明治天皇は直ちに医師や看護師を派遣し、全国から多くの義援金が寄せられました。生存者は日本海軍の艦船で丁重にオスマン帝国へ送還されました。この事件はトルコ国内で大きく報道され、日本人への友好的な感情が育まれるきっかけとなりました。現在、和歌山県串本町には、この遭難事件を記念するトルコ記念館があります。また、2015年には、日本トルコ友好125周年を記念して、合作映画「海難1890」が制作されました。

日露戦争

1904年に始まった日露戦争は、オスマン帝国国民から大きな関心を集めました。クリミア戦争や露土戦争でロシアからの圧力を受けていたオスマン帝国にとって、南下政策を進めるロシアは共通の敵でした。1905年、日本が日本海海戦でロシアのバルチック艦隊に勝利すると、オスマン帝国では自国の勝利のように歓喜しました。

オスマン帝国は、ギリシャ海軍がイタリアから装甲巡洋艦を購入しようとした際、対抗できる艦艇を日本に打診しましたが、日本側は諸事情により断りました。その後、オスマン帝国はドイツから戦艦を購入しました。

第一次世界大戦

日露戦争後、ロシアはバルカン半島への進出を企て、ボスポラス海峡とイスタンブールの掌握を狙いました。イギリスとフランスはロシアと同盟関係にあり、オスマン帝国はドイツに接近。1914年、オスマン帝国は第一次世界大戦に同盟国側として参戦し、連合国側として参戦した日本とは敵対関係になりました。敗戦後、オスマン帝国は広大な領土を失いました。

戦争中、ロシアの捕虜となったトルコ兵は日本に移送され、その後、日本がトルコ本国へ送り届けることとなりました。しかし、輸送船がギリシャ軍に拿捕され、長期間抑留されるという事件も発生しました。

戦間期

第一次世界大戦後、トルコは列強による国土分割の危機に瀕しましたが、ケマル・アタテュルクらの指導により祖国解放戦争が開始され、トルコ共和国が成立しました。1924年には日本との国交が樹立され、1926年には日土協会が発足しました。トルコの近代化政策は、日本の明治維新を手本にしたもので、法整備や民族資本の育成が行われました。1930年には日土通商航海条約が締結され、両国関係はより強固になりました。

戦間期、日本とトルコは良好な関係を保ち、トルコ海軍と日本海軍の交流も続きました。トルコは日本に軍艦の発注を検討しましたが、最終的にはイギリスに発注しました。

第二次世界大戦

第二次世界大戦でトルコは中立を宣言し、長らく維持しましたが、連合国の圧力により1945年に日本に宣戦布告しました。しかし、国内世論は宣戦布告に反対であり、対日軍事行動は一切行われませんでした。

戦後

戦後、両国の国交は回復し、トルコは日本に対し賠償請求を放棄しました。日本はトルコに対し、政府開発援助を通じてインフラ整備など積極的に支援を行いました。特に、イスタンブール市内のインフラ整備には多額の資金と技術が投入されました。1985年のイラン・イラク戦争では、トルコ航空機が在イラン日本人を救出し、1999年のトルコ大地震の際には日本から救助隊の派遣や物資支援が行われました。ボスポラス海峡海底地下鉄の建設も日本の支援によるものです。

年表

1873年：福地源一郎、島地黙雷がオスマン帝国を訪問
1878年：日本の軍艦「清輝」がイスタンブールを訪問
1887年：小松宮彰仁親王がイスタンブールを訪問
1890年：エルトゥールル号遭難事件
1905年：日本海海戦
1923年：ローザンヌ条約締結、トルコ共和国成立
1924年：両国国交樹立
1926年：日土協会設立
1930年：日土通商航海条約締結
1945年：トルコが日本に宣戦布告、国交断絶
1951年：国交回復
1985年：トルコ航空機による在イラン日本人救出
1988年：第二ボスポラス橋開通（日本の政府開発援助による）
1993年：土日基金文化センター設立
1999年：トルコ大地震
2003年：「日本におけるトルコ年」開催
2010年：エルトゥールル号遭難事件120周年、「トルコにおける日本年」開催
2011年：東日本大震災発生、トルコが救援隊を派遣
2013年：ボスポラス海峡横断地下鉄（マルマライ）開業（日本の政府開発援助による）
2019年：「日本におけるトルコ文化年」開催、在名古屋トルコ共和国総領事館設置
2023年：トルコ・シリア地震

貿易

戦後、二国間の貿易は、トルコ側の赤字が続いています。

文化・経済交流

日本には、トルコとの交流を推進する多くの友好協会が存在し、活発な文化交流が行われています。また、両国間では、政府系団体や民間レベルでの交流が盛んに行われています。

外交使節

両国は、それぞれ大使館を設置し、外交関係を維持しています。過去には、多くの駐日トルコ大使が任命されており、両国関係の発展に尽力してきました。

関連項目

日本の国際関係
トルコの国際関係
在トルコ日本国大使館、在イスタンブール日本国総領事館
駐日トルコ共和国大使館、在名古屋トルコ共和国総領事館
宮崎淳
江頭2:50
ユセフ・トルコ
山田宗有
ヌスレット・サンジャクリ
トルコ風呂 (性風俗)、ハンマーム

外部リンク

 2010年トルコにおける日本年
トルコ共和国 - 外務省
在トルコ日本国大使館
* 駐東京トルコ共和国大使館

日本とトルコの関係は、歴史的な出来事を共有し、互いに助け合ってきた特別な関係です。両国は今後も、文化交流や経済協力を通じて、更なる友好関係を築いていくことが期待されます。

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