明石行雄

明石行雄

明石行雄（あかし ゆきかつ）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将です。備前国の宮山城、保木城の城主であったと伝えられています。官位は従五位下・伊予守。

通称として景親（かげちか）の名が広く知られていますが、彼自身がそのように署名した書状は確認されていません。近年の研究では、確実な文書から実名は「行雄」であるとされています。

生涯

浦上家臣時代

備前国において、浦上氏の家臣として浦上則宗の代から仕えた備前明石氏の出身です。父の名は源三郎景憲とも言われていますが、確証は得られていません。

天文年間末からの浦上政宗と宗景兄弟の分裂においては、『備前軍記』で一貫して宗景に味方した股肱の臣として記されており、以後、宗景の重臣として仕えました。永禄10年（1567年）の明善寺合戦では、浦上方として宇喜多直家への援軍として駆けつけ、勝利に貢献したとされています。

永禄11年（1568年）6月1日には、備前の片上と浦伊部（いずれも現在の岡山県備前市内）の間で起こった境界争いの仲介を、大田原長時、服部久家、日笠頼房、岡本氏秀、延原景能とともに行っています。永禄12年（1569年）10月には、美作国で毛利氏に奪われた高田城の奪還を狙う三浦貞広を岡本氏らと共に支援し、高田城代・香川広景を攻撃しました。

天正2年（1574年）から浦上宗景と宇喜多直家の対立が激化し、天神山城の戦いが勃発した際には宗景を支持。情勢が不利となっても宗景と共に天神山城に籠って交戦していましたが、やがて抗いきれないと判断すると宗景を見限り、天神山城に火を放った上で城内の一角を占拠し、天神山城陥落のきっかけを作りました。

この時、行雄の裏切りが天神山陥落に深く関わったことは、毛利氏の記録にも記されています。

宇喜多家臣時代（直家期）

浦上氏滅亡後は、浦上時代の所領をそのまま認められましたが、宇喜多氏の老臣の列には加えられず、「客分」として迎えられました。天正6年（1578年）の第二次上月城の戦いでは、攻城側の後巻として八幡山城(西播磨)に布陣していましたが、上月城の救援に来ていた羽柴秀吉の家臣・竹中重治に密かに通じるなど、不穏な動きを見せていました。しかし、攻城側が優勢であったため、実際には行動を起こしていません。

天正7年（1579年）に直家が毛利氏を裏切って織田信長に通じた際には、毛利氏との戦争に備えて備前と美作の国境付近の白石城の改修に携わりました。天正8年（1580年）3月には、宇喜多氏から毛利氏へと寝返った竹内為能が籠る高城攻囲に参加。この攻城戦の際、蕨尾山に陣取った行雄の軍勢が籠城兵の夜討ちによる反撃を受け、平尾弾正忠が討ち取られるなどの被害を受けましたが、宇喜多軍は高城の攻略に成功し、為能を追放しました。高城陥落後の同年9月には、篠向城に移って城の改修を行っています。

天正10年（1582年）には、備中高松城の戦いに直家の嫡子・八郎（後の宇喜多秀家）を奉じて羽柴秀吉の元に参陣し、賞賛されました。

宇喜多家臣時代（秀家期）

天正11年（1583年）、羽柴秀吉と毛利氏との話し合いで決められた宇喜多・毛利両氏の領地の境界で、宇喜多方に組み込まれた事に不満を示し交戦の構えを見せた娘婿である虎倉城主・伊賀家久に対して城を開城し毛利領へと退去するよう説得し、家久を虎倉より退去させる事に貢献しました。天正14年（1586年）に従五位下伊予守に叙任され、以後の書状での名乗りは明石伊予守行雄となります。

天正16年（1586年）9月8日には、上洛した毛利輝元の屋敷に宇喜多秀家の使者として参上し、宇喜多屋敷へと輝元を招待したい旨を伝えました。文禄3年（1594年）に行雄は娘婿・伊賀家久の遺児である才法師丸の行く末を心配して、当時の家久の主君であった小早川秀秋の家老である山口宗永に書状を送り、「似合いの御用」を仰せつけて欲しいと頼みました。また、この書状では「老足の儀」により参上は出来ないので御用は掃部助（全登）に仰せつけて欲しいとも頼んでいるので、この時既に老衰が始まっており明石氏の当主も掃部助に移譲されていたものと見られます。なお、この文禄3年（1594年）付けの書状が行雄の遺した最後の書状です。

慶長2年（1597年）に始まる慶長の役において、長信という人物（名字は不明）が行雄の出陣があるかどうかを尋ねる書状が残っており、少なくとも慶長2年までは行雄が存命であったことがわかりますが、没年は不明です。

脚注

参考文献

* 大西泰正『「豊臣政権の貴公子」宇喜多秀家』KADOKAWA〈角川新書〉、2019年9月。ISBN 9784040822877。

もう一度検索