是儀

是儀（し ぎ）

是儀（生年不詳 - 238年-251年）は、後漢末期から三国時代の呉にかけて活躍した人物で、字を子羽と称しました。青州北海郡営陵県（現在の山東省付近）の出身で、元は「氏」という姓でした。

生涯

是儀は若い頃、県の役人としてキャリアをスタートさせ、その後、北海郡で孔融に仕えました。しかし、戦乱が激化すると、彼は劉繇を頼って江南へと移住します。劉繇が敗れると、会稽に居を構えました。

孫権の時代になると、是儀はその才能を見出され、騎都尉に任命され、機密事項の処理を任されるなど、孫権からの厚い信任を得ました。呂蒙が関羽を討伐する際、孫権から意見を求められた是儀は、この計画を全面的に支持し、自身も関羽討伐戦に参戦して武功を挙げ、忠義校尉に任じられます。是儀は一旦辞退を申し出ますが、孫権は「私は趙簡子ではないが、あなたを周舎にできないということはないだろう」と諭し、是儀は辞退を撤回しました。

荊州が平定され、都が武昌に移ると、是儀は裨将軍に任命され、後に都亭侯に封じられ、侍中の職務を代行しました。孫権が兵士を増員しようとしましたが、是儀は軍事的な才能がないことを理由に固辞しました。

黄武年間（222年 - 229年）には、皖に派遣され、将軍の劉邵と共に魏の曹休を誘い出す作戦を立案し、見事に曹休を打ち破りました。この功績により、是儀は偏将軍に昇進し、尚書の事務全般を取り仕切り、各官庁間の調整や訴訟処理に奔走しました。さらに、皇族や貴族の子弟に対する教育係も務めました。

その後、是儀は太子である孫登の補佐役となり、孫登からは深い敬意を払われ、何かを決める際には必ず是儀の意見を求めてから実行に移しました。その功績が認められ、都郷侯に封じられます。孫登と共に建業に戻ると、再び侍中・中執法に任じられ、官庁間の調整や訴訟処理に携わりました。

ある時、呂壱が元の江夏太守であった刁嘉が国政を批判していると讒言しました。孫権は激怒し、刁嘉とその関係者を投獄しましたが、多くの者が呂壱を恐れて刁嘉の批判を聞いたと証言する中、是儀だけはそれを否定しました。孫権から厳しく追及されても、是儀は「私の首には斬刑の刃が迫っています。どうして刁嘉のために事実を隠し、一族皆殺しの刑を受け、不忠の死を遂げる必要がありましょうか。もしその件を見聞きしていたのなら、その経緯を説明できるはずです」と主張しました。これにより、孫権は是儀を許し、刁嘉の罪も撤回しました。

蜀漢の諸葛亮が亡くなると、孫権は是儀を蜀漢への使者として派遣し、同盟関係を強化するよう命じました。是儀は孫権の期待に応え、蜀漢との友好関係を深め、尚書僕射に任じられました。

孫登の死後、太子の孫和を支持する南宮と、魯王孫覇を支持する魯宮が設立されると、是儀は魯王傅を兼任することになりました。是儀は、南宮と魯宮が隣接していることを危惧し、孫覇に対してその才能を国家のために役立て、上下の秩序を正すべきだと度々諫言しました。傅として常に主君を諫め、正そうと努め、上司には忠実に仕え、人々には敬意を払い接しました。

是儀は、時事問題について意見を述べることを避け、優柔不断な態度を取ることが多かったため、孫権から責められたことがありました。是儀は「聖王が上にいらっしゃるので、私はその下で職務に励むのみです。任務を十分に果たせるかどうかを常に恐れており、軽率な意見で主君の耳を煩わせるようなことは考えておりません」と答えました。

是儀は数十年にわたり国家に尽くしましたが、一度も過ちを犯すことはありませんでした。呂壱が多くの高官を陥れた際も、是儀には讒言される隙がありませんでした。孫権は是儀を高く評価し、「人々が皆是儀のようであれば、刑罰は不要になるだろう」と述べました。

病気が重くなると、白木の棺を用意させ、平服で入棺し、葬儀は質素に行うよう遺言しました。そして81歳で生涯を閉じました。

清貧

是儀は財産に関心がなく、他人からの援助も受けず、住居も質素でした。ある時、是儀の家の隣に豪邸が建てられましたが、孫権は是儀が贅沢をしないことを知っていたため、側近に確認させたところ、やはり別人の家でした。

是儀の衣服は粗末な織物で、食事も質素なものでした。貧しい人々への援助を惜しまなかったため、蓄えはほとんどありませんでした。孫権はこれを知り、是儀の家を訪問し、質素な食事を実際に味わい、その場で俸禄と下賜品を増額し、土地を増やすように命じました。しかし、是儀は度重なる辞退を申し出たため、孫権は是儀の清貧な生活を尊重し、そのまま全うさせました。

参考文献

* 陳寿、裴松之注『正史 三国志』、井波律子・今鷹真・小南一郎 訳・解説（ちくま学芸文庫全8巻、1992 - 93年）、※呉書は6・7・8巻、小南一郎訳。

脚注

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