服部直彰

服部直彰

服部直彰（はっとり なおあき）は、1899年（明治32年）9月に生まれ、1949年（昭和24年）10月17日に亡くなった、日本の内務・警察官僚です。高知県知事、陸軍司政長官、中国地方副総監などを務めました。

生い立ちと初期のキャリア

熊本県鹿本郡大道村藤井（現在の山鹿市）出身。熊本県立鹿本中学校、第五高等学校を経て、1923年に東京帝国大学法学部を卒業しました。1922年11月には高等試験行政科試験に合格しています。

卒業後、内務省に入省し、千葉県属としてキャリアをスタート。その後、大分県、山梨県、大阪府の警察部、京都府庁、鹿児島県庁などで勤務しました。鹿児島県では書記官・警察部長を務め、警視庁では保安部長や刑事部長を歴任。福岡県や大阪府でも総務部長を務めるなど、様々な行政部門で経験を積みました。

戦時下の活動

1941年1月、高知県知事に就任。戦時体制の整備に尽力しました。1942年7月7日には陸軍司政長官に発令され、同年8月1日に第25軍軍政監部付・タパヌリ州長官に就任。1943年4月にはマライ軍政監部内政部長、1944年4月には西海岸州（州都パダン）長官に転任しました。

1945年4月に陸軍省軍務局付として帰国。同年6月、中国地方副総監に発令されました。同年8月6日、広島市への原子爆弾投下により被爆。左手首に火傷を負いながらも、救援活動に尽力しました。この原爆投下で、妻マサは犠牲となっています。

原爆投下時の状況

原爆投下時、服部は広島文理科大学本館（現在の広島大学理学部1号館）内にあった総監府庁舎の副総監室で被爆しました。幸い、机の下に身をよじったことで一命を取り留めました。その後、総監府庁舎を脱出し、二葉山の防空壕に移動した第二総軍司令部に到着。大塚惟精総監の死去と総監府をはじめとする市内行政機関の機能喪失を報告し、事態の収拾を総軍に委任しました。当日午後5時ごろには、戦災時の緊急避難場所に指定されていた比治山下の多聞院に「仮総監府」を設置。その後、高野源進広島県知事、石原虎好警察部長と協議を行い、高野知事に戦災処理を一任しました。

戦後と死

1945年10月、副総監を辞任。故郷に短期間滞在した後、上京し再婚しました。しかし、司政長官時代の戦犯容疑により拘留され、裁判を受けることになりました。訴因は「反日活動家を多く検挙、留置して虐待した部下の行為を容認した」というものでした。10年の刑を宣告され服役中の1949年10月、スマトラ島メダンのランイン収容所で病死しました。

編著

『高知県軍事援護誌』服部直彰、1941年。

参考文献

歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
中国地方総監府誌刊行会 [編]「中国地方総監府誌 : 原爆被災記録」（家永三郎他編『日本の原爆記録 6』日本図書センター、1991年、所載。原本は1972年刊行。）
「第102号 昭和20年5月3日 陸軍異動通報」 アジア歴史資料センター Ref.C12120957600
長井魁一郎編著『大東亜戦争BC級戦犯熊本県昭和殉難者銘録』長井解子、1997年。
* 人事興信所編『人事興信録』第14版 下、1943年。

服部直彰は、激動の時代に翻弄されながらも、その責務を全うしようとした人物でした。彼の生涯は、日本の近代史を考える上で重要な一例と言えるでしょう。

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