本多信俊

人物概要

本多信俊（ほんだ のぶとし）は、日本の戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将で、徳川氏の重要な家臣の一人でした。彼の幼名は百助と伝えられています。当初は光俊と名乗っていましたが、後に信俊に改名しました。忠政や庄左衛門といった別名も持っていたとされます。

彼の父は本多忠光（百助、平左衛門）、母は九鬼氏の娘でした。妻は小栗忠政の娘を迎えています。

徳川家康への仕官と初期の活躍

信俊は、徳川家康がまだ松平元康と称していた時代から仕える、三河譜代の家臣でした。桶狭間の戦い後に家康が今川氏から独立していく過程では、牧野氏をはじめとする地域の有力豪族に対する調略など、多方面で功績を挙げ、初期の徳川政権の基盤作りに貢献しました。

豪勇と逸話

彼は豪勇の武将として知られており、その武勇にまつわる逸話が多く伝えられています。初名は光俊でしたが、織田信長のもとへ使者として派遣された際、その人物を信長が気に入り、『信』の一字を与えられて信俊と改名したという逸話が伝わっています。

主要な戦いと知行

永禄年間、徳川家康の命を受けて一宮砦（現在の愛知県豊川市）を築き、今川軍に包囲された際、家康が少数の兵を率いて救援に駆けつけ、多勢の今川軍を打ち破ったという出来事がありました。その後、家康は砥鹿神社に宿陣したと伝わり、これは『神君一宮砦後詰め』として語り継がれる逸話となっています。現在も砦跡は残されています。

家康は信俊の豪勇を高く評価しており、元亀2年（1571年）には遠江国浜名城を与えて城主としました。さらに、武田信玄が元亀3年（1572年）から開始した西上作戦において、信玄が信俊の立て籠もる浜名城を避けて進軍したとまで言われるほど、その存在は敵からも恐れられていたようです。

天正9年（1581年）に起こった高天神城の戦いでは、彼は敵の首級を五つ討ち取るという顕著な武功を挙げました。

本能寺の変後の最期

天正10年（1582年）6月2日に本能寺の変で織田信長が急死すると、徳川家康は混乱に乗じて旧武田領を支配する野心を抱きました。家康は6月10日、信長から甲斐国を任されていた河尻秀隆に対し、信俊と名倉信光（喜八郎）を使者として派遣しました。使者の目的は、旧武田氏の家臣による不穏な動きがあることを理由に、秀隆に美濃国へ帰るよう促すことにありました。

しかし、秀隆はこの提案に応じませんでした。秀隆は甲斐統治の本拠としていた岩窪館（現在の山梨県甲府市岩窪町）において、信俊を殺害したとされています。この出来事は天正10年6月に起こり、信俊は享年48で非業の死を遂げました。彼の死により、その所領は没収処分となりました。

一族の不幸とその後

信俊の一族には不幸が続きました。彼の弟である忠信は、関ヶ原の戦いの際に家康からの使者として、親族にあたる九鬼嘉隆のもとへ派遣されましたが、西軍に呼応した嘉隆によって殺害されてしまいます。また、忠信の養子である正盛（内藤正成の子）は、東照宮造営の副奉行を務めていた際に同僚の山城宮内と争論となり、工事完成後に自刃を命じられるという悲劇に見舞われました。

一方で、信俊の息子である信勝は、誕生時に兎唇（みつくち）であったため、家康が同じく兎唇でありながら勇将として知られた山県昌景にあやかり、幼名を山県としたと伝えられています。成長後、信勝は家康に近侍するようになり、1000石の所領を与えられました。その後、徳川秀忠に付属し、大番頭を務めるなど、徳川家臣として仕えました。

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