杜松 (明)

杜松（と しょう）

杜松は、明代末期の軍人であり、その生涯は波乱に満ちていました。字は来清といい、蘇州府崑山県の出身です。兄に杜桐がいます。

初期の軍歴と昇進

杜松は、若い頃から度胸と智謀に優れ、並外れた勇敢さを持っていました。当初は舎人として軍に従い、功績を重ねて寧夏の守備にまで昇進しました。万暦22年（1594年）、オルドス部のボショクト・ジノンが侵攻した際、杜松は游撃の史見・李経とともに迎撃しましたが、敵の伏兵に遭い、史見は戦死、自身も重傷を負いました。しかし、麻貴の援軍を得て敵を撃退し、その功績から游撃将軍に進められ、延綏参将に転じました。その後、麻貴がボショクト・ジノンの本拠を攻撃した際には、右軍を率いて清平堡に進出し、多くの敵を捕え、延綏副総兵に昇進しました。

性格と挫折

杜松は、その勇猛さとは裏腹に、感情をコントロールすることが苦手で、些細なことで怒りを爆発させることがありました。一度は怒りのあまり剃髪して僧になろうとしたこともありましたが、部下に連れ戻されました。その後、孤山副総兵として再起しました。万暦33年（1605年）には、署都督僉事に抜擢され、李如樟に代わって延綏に駐屯しました。万暦34年（1606年）にはオルドス部の侵攻を撃破し、薊州鎮に転出しました。

遼東での活躍と失脚

万暦36年（1608年）には、李成梁に代わって遼東に駐屯し、連山駅で敵を破るなどの活躍を見せました。しかし、朶顔衛の頼暈歹が黄台吉と結んで侵攻を企てた際には、杜松は黄台吉の陣営を襲撃し、薊州鎮を襲撃した者たちを連行するという功績を挙げました。一方で、拱兎の部落を虐殺したことが問題となり、副使の馬拯との対立が激化しました。杜松は、馬拯が自分の功績を貶めていると考え、ますます怒りを募らせ、自ら塞外に出て敵の根拠地を突こうとしましたが、逆に多くの兵士と馬を失ってしまいました。この責任を問われ、杜松は郷里に帰されることとなり、遼東での軍事活動から一時的に退くことになりました。

再起と最期

杜松は、その勇敢さを惜しまれつつも、失敗のために推挙されることはありませんでした。しかし、万暦43年（1615年）にオルドス部が侵攻した際には、軽騎で敵陣に突撃し、再び任用されることとなりました。後金が台頭すると、山海関に駐屯する総兵官に任じられ、張承廕の戦死後には、遼陽の救援を命じられて駆けつけました。万暦47年（1619年）には、楊鎬が四路に分かれて後金征討の軍を出すと、杜松は6万の兵をもって撫順方面を担当することになりました。

しかし、杜松は撫順関を出た後、渾河を渡る際に無理な渡河を強行し、多くの兵士が溺死してしまいました。さらに、サルフ谷口で後金の伏兵に遭い、大敗を喫して戦死しました。この戦いは、サルフの戦いとして知られており、明軍の敗北の一因となりました。杜松の死後、朝廷は彼の軽率な行動を非難しましたが、その功績を認め、少保・左都督の位を追贈しました。

杜松は、その勇猛さと智謀で一時名を馳せましたが、その性格的な欠点と晩年の失態により、悲劇的な最期を迎えた軍人でした。彼の生涯は、明朝末期の混乱を象徴する出来事の一つとして、後世に語り継がれています。

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