東京ダービー (競馬)

東京ダービー

大井競馬場のダート2000メートルを舞台に行われる、サラブレッド系3歳馬による重賞競走です。2024年からは正式名称を「農林水産大臣賞典 東京ダービー」と改め、地方競馬における非常に重要な一戦として施行されています。

かつては南関東公営競馬に所属する3歳馬クラシック競走の第2冠として、南関東グレードのSIに格付けされていました。しかし、2024年度からの3歳ダート競走体系の抜本的な改革に伴い、中央・地方全国交流のダートグレード競走（JpnI）へと昇格。新たな「3歳ダート三冠」競走体系の第2戦として、その役割を大きく変えました。これにより、日本全国から集まる精鋭たちが、東京ダービーの栄光を目指して大井の砂上で競い合います。

歴史と道のり

本競走の歴史は古く、1955年に「春の鞍」という名称で創設されたのが始まりです。当初は大井競馬場のダート2000メートルで、当時の4歳馬（現3歳馬）による主要レースとしてスタートしました。その後、1964年には「東京都ダービー」と名称が変更され、1966年には現在の「東京ダービー」という名前が定着しました。

施行距離についても変遷があり、1967年からは2400メートルで争われるようになりましたが、1996年に行われた南関東クラシック競走のアメリカンスタイルへの移行と距離体系の見直しを経て、1999年に再び創設当初と同じ2000メートルに戻されました。

ダートグレード競走への転換

2024年の体系改革は、東京ダービーに過去最大の変化をもたらしました。3歳ダート路線再整備の一環として、羽田盃と共にダートグレード競走に指定され、JRA所属馬や他地区の地方競馬所属馬にも出走の道が開かれました。出走できるのはサラブレッド系の3歳牡馬および牝馬に限定され、せん馬は出走できません。

この改革の最も大きな要素の一つが、賞金の飛躍的な増額です。2023年までの1着賞金は5000万円でしたが、2024年からは一挙に1億円へと倍増しました。これは2023年時点でJBCクラシックや東京大賞典と並ぶ地方競馬の最高額賞金であり、JRAを含めたダートの重賞競走としても、GIであるフェブラリーステークスやチャンピオンズカップの1億2000万円に次ぐ、国内有数の高額賞金レースとなりました。賞金額の向上は、よりレベルの高い競走馬が全国から集まる強い動機付けとなっています。

また、ダートグレード競走への昇格と、かつて参加していたダービーシリーズの休止に伴い、レースファンファーレもダートグレード競走用のものに変更されました。2024年の初年度は、出走可能な16頭の枠に対し、JRA所属馬に4頭、地方所属馬に12頭という割り当てで施行されています。

特徴と記録

2006年から2023年までは「ダービーWeek」（後のダービーシリーズ）という全国的な企画に参加しており、その期間中はオリジナルのファンファーレが演奏されていました。

記録面では、騎手の町田直希氏が18歳2か月での勝利を飾り、同競走の最年少勝利記録を更新しました。南関東以外の所属騎手では、金沢競馬場所属の吉原寛人騎手が複数回優勝を遂げています。一方、大井競馬場で長年リーディングジョッキーとして君臨した的場文男騎手は、挑戦を重ねながらも勝利には手が届いておらず、これは「大井の七不思議」の一つとして語り継がれています。

副賞としては、数々の栄誉とともに、2011年からは優勝馬の馬主に、その種牡馬の次年度の配合権利が贈られるという珍しい試みも行われています。

ダートグレード競走に移行する前は、地方競馬単独開催の重賞としては、古馬混合競走を含めても国内最高額の賞金を誇るレースでした。そのため、実力がありながらも賞金体系が低い他地区や、現時点ではダートの3歳路線が確立されていなかった中央競馬から、このレースを目標に南関東へ移籍してくる馬も少なくありませんでした。

出走条件と選定

本競走への出走権を得るためには、トライアル競走での上位入着や、選定対象となる競走での実績が重要となります。2024年からは、いくつかの指定競走で優先出走権が付与されるほか、出走馬選定において優先される競走が定められています。

特に、JRAからの転入馬の出走選定方法には特別なルールがあります。2019年から、東京ダービー（および2024年以降の3歳ダート三冠競走）に出走する場合、JRA所属時に獲得した賞金は考慮されず、地方競馬所属時の番組賞金のみで選定が行われる方式に変更されました。これにより、中央から転入していきなり東京ダービーに出走することは実質不可能となり、転入後に地方のレースで賞金を加算するか、トライアルで優先出走権を獲得する必要があります。

歴代の名馬と記録更新

過去の歴史を振り返ると、南関東三冠馬となったトーシンブリザードや、無敗で制したアジュディミツオー、ダートグレード移行前最後の南関東限定戦を無敗で制したミックファイアなど、多くの名馬が東京ダービーの栄光を手にしています。売得金額も時代の変化とともに増加傾向にあり、特にダートグレード移行初年度の2024年には、従来の記録を大幅に塗り替える26億円超えの売上を記録し、全国的な注目度の高まりを明確に示しました。

歴代の記録としては、最多勝利騎手は赤間清松氏の6勝、最多勝利調教師は川島正行氏と出川己代造氏がそれぞれ5勝を挙げています。また、JRAの日本ダービーと東京ダービーの両レースを同じ馬主が制覇した例も複数あります。

関連するレース

東京ダービーは、2024年より新たな3歳ダート三冠競走体系の中核をなすレースとなりました。この三冠は、第1戦の羽田盃（JpnI、同時期にJpnI昇格）、そして秋季に施行されるジャパンダートクラシック（JpnI、従来のジャパンダートダービーを改称・時期変更）と共に、日本の3歳ダート馬にとって最大の目標となります。かつては南関東三冠の第2冠として、羽田盃、東京王冠賞（現在は休止）と共に位置づけられていました。

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