東市来町美山

東市来町美山の概要

東市来町美山（ひがしいちきちょうみやま）は、鹿児島県日置市に位置する地域で、旧薩摩国日置郡に属していました。郵便番号は899-2431で、2020年10月1日現在の人口は538人、世帯数は220世帯です。この地は、薩摩焼の最大の産地として知られ、その歴史は安土桃山時代にまで遡ります。

歴史

苗代川村の成立

16世紀末、豊臣秀吉による朝鮮出兵（慶長の役）の際、島津氏によって朝鮮半島から多くの陶工が連行され、この地に集められました。彼らは「苗代川村」を形成し、薩摩藩の保護と統制のもと、薩摩焼の生産と文化の保護に尽力しました。江戸時代には、薩摩焼は藩の重要な産業となり、特に1867年のパリ万国博覧会への出展をきっかけに、世界的な人気を博しました。

薩摩焼の隆盛

美山は薩摩焼の主要な産地として、多くの窯元が軒を連ね、「薩摩焼の里」として発展しました。現在も14の窯元が活動しており、工房や喫茶店、飲食店なども集積しています。地域は観光地としても知られ、薩摩焼の歴史と文化に触れることができます。東市来都市計画では、美山を「薩摩焼の里広域交流拠点」として位置づけ、歴史と文化資源を活かしたまちづくりが進められています。

薩摩焼四百年記念

美山の南部には、「薩摩焼四百年記念石塔」が建立されています。この石塔は、1998年に韓国などから寄贈されたもので、除幕式には当時の総理大臣も参加しました。この石塔は、薩摩焼の歴史と国際的な交流を象徴する存在となっています。

先史時代の遺跡

美山には、先史時代の遺跡も存在します。「雪山遺跡」と「池之頭遺跡」では、旧石器時代から中世にかけての遺物が発見されており、この地域が古くから人々の生活の場であったことを示しています。

苗代川村成立前の被虜人の動き

慶長の役で連行された陶工たちは、当初は串木野や鹿児島城下に住んでいました。しかし、日本人との文化や習慣の違いから迫害を受け、生活に困窮しました。そのため、島津義弘は彼らを苗代川に移住させ、生活基盤を提供しました。

苗代川村の成立と近世

苗代川村は、江戸時代に伊集院郷の一部として成立しました。この地は薩摩藩によって保護され、薩摩焼の生産が奨励されました。陶工の中から庄屋が選ばれ、村の運営を担いました。また、薩摩街道が通り、地域は交通の要衝でもありました。

薩摩藩による保護と統制

苗代川では、薩摩藩による手厚い保護政策が取られました。沈当吉のような優れた陶工が重用され、薩摩焼の技術が発展しました。しかし一方で、苗代川の住民は移住の自由がなく、外部との交流も制限されていました。薩摩藩は苗代川を「異域」として扱い、朝鮮風俗の維持を命じました。そのため、住民は明治時代初期まで朝鮮式の生活を送っていました。

薩摩焼の興隆とパリ万博への出展

島津重豪の時代には、苗代川焼が薩摩藩の重要な産品となり、幕府や諸大名に献上されるようになりました。調所広郷は、財政改革の一環として苗代川の陶業を支援し、磁器の生産も開始されました。1867年のパリ万国博覧会では、苗代川の薩摩焼が出品され、世界的なブームを巻き起こしました。

江戸時代の窯

江戸時代には、多くの窯が美山に作られました。特に「御定式窯」は薩摩藩の御用窯として知られています。堂平窯跡からは、当時の陶器や瓦が発掘され、初期の薩摩焼の様子を知ることができます。

廃藩置県後の苗代川

明治時代の廃藩置県によって、苗代川の陶業は民間企業によって運営されることになりました。しかし、経営難に陥り、会社は解散しました。その後、個々の陶工たちが窯を再建し、技術を継承していきました。また、苗代川の住民は平民に編入され、日本式の氏を名乗るようになり、多くが地域外へと移住しました。

近代の苗代川・美山

明治時代には、下伊集院村の一部となり、苗代川は村の中心地として発展しました。その後、東市来町に編入され、大字名を「美山」に改称しました。現在では、日置市の一部として、薩摩焼の歴史と文化を伝える地域として知られています。

地理

美山は、日置市の西部に位置し、周囲を他の町と接しています。地域内には、ため池や河川があり、豊かな自然に恵まれています。

文化財

美山には、薩摩焼に関する多くの文化財があります。県指定の「美山薩摩焼窯（御定式窯）」や「日置市美山玉山神社伝来資料」は、この地の歴史と文化を物語る貴重な資料です。

施設

美山には、公民館、記念館、陶遊館などの公共施設があります。また、韓国の名誉総領事館も置かれており、国際的な交流も行われています。

産業

美山は、薩摩焼の生産が盛んな地域です。窯元や工房が多く、観光客も多く訪れます。また、近年では、木工やガラス工芸の工房も増えており、多様な工芸品が作られています。

観光

美山は、「薩摩焼の里」として観光客に人気があります。陶芸体験ができる美山陶遊館や、窯元を巡る散策などが楽しめます。毎年秋には「美山窯元祭り」が開催され、多くの人で賑わいます。

教育

美山には、日置市立美山小学校があります。かつては中学校もありましたが、現在は統合されています。

交通

美山には、南九州西回り自動車道が通り、美山パーキングエリアが設置されています。また、鹿児島県道24号線が地域を東西に走り、交通の便が良い地域です。

著名な出身人物

美山出身の著名な人物として、外交官・政治家の東郷茂徳がいます。彼は、第二次世界大戦時の外務大臣を務めました。

関連作品

司馬遼太郎の小説『故郷忘じがたく候』や紀行集『街道をゆく』では、美山や薩摩焼の歴史が描かれています。

まとめ

東市来町美山は、薩摩焼の歴史と文化が息づく地域です。かつて朝鮮から連れてこられた陶工たちが築いたこの地は、現在も薩摩焼の産地として、多くの人々を魅了しています。観光地としても人気があり、薩摩焼の歴史と文化に触れることができます。

もう一度検索