東興の戦い

東興の戦い

東興の戦い（とうこうのたたかい）は、中国の三国時代の252年、具体的には呉の建興元年および魏の嘉平4年に、呉と魏の間で発生した重要な戦闘です。この戦いは魏の大将軍である司馬師が、呉の帝、孫権の死を契機に東興を攻撃するよう命じたことから始まります。しかし、結果的には呉軍が大勝利を収めることとなりました。

背景

252年10月、呉の帝である孫権が崩御すると、魏の征東将軍胡遵は、毌丘倹や王昶と共同で呉の討伐を進言しました。これを受け、呉の大将軍である諸葛恪は、魏からの襲撃に備えて巣湖周辺の東興に位置する堤防の改修作業を実施します。この堤防は以前に孫権によって築かれたものであり、諸葛恪はその防御を強化するため、堤防を囲むように二つの城を築き、全端と留略にそれぞれ千人の兵を守備につけさせました。

戦闘の経過

12月、魏の大将軍司馬師は、鎮東将軍の諸葛誕や胡遵と共に呉への侵攻を命じ、安東将軍司馬昭を監軍として随行させました。諸葛誕は自らの軍を三つの部隊に分け、豫州の王昶や荊州の毌丘倹がそれぞれ南郡及び武昌を攻撃する一方で、自身は7万の兵を率いて東興へ向かいました。

東興に進軍した諸葛誕たちは、堤防を決壊させる目的で船を使い、浮橋を構築して堤上に進軍し、全端と留略が守る二つの城を攻略しようとしました。しかし、地勢が険しいため攻撃は容易ではありませんでした。

これに対抗して呉軍は、諸葛恪が全軍を指揮し、丁奉、留賛、呂拠、唐咨を先鋒に選びました。先鋒部隊が長江を越え、山岳地帯を越えて西方へ向かおうとした際、丁奉は敵の動きに遅れを取らないため、3000の兵士を率いて単独で急行します。彼は迅速に進軍し、2日で戦場に到着。寒い日であったため、魏軍の武将たちは油断し宴を開いていました。この絶好のチャンスを逃さず、丁奉は兵士を鼓舞し、薄い前衛を奇襲。攻撃に成功し、敵の陣地を粉砕しました。

遅れて到着した呂拠らも合流し、魏軍に対して猛烈な攻撃を行いました。結果、魏軍は大混乱に陥り、浮橋への撤退を試みますが、朱異によって浮橋が壊され、多くの兵士が取り残され戦死しました。この戦いで魏軍は大規模な損害を被り、再度の侵攻を諦めることとなりました。

戦後の影響

東興の戦いによって、呉は戦利品として多数の牛馬や軍事物資を獲得しました。功績を評価された諸葛恪は陽都侯に任命され、さらに丞相にまで昇進しました。しかし、その勝利に自信を持った彼は翌年に無謀にも魏に侵攻しますが、疫病が流行し多くの兵を失うことになり、その結果、彼は人望を失い、最終的には陰謀によって命を落とす事となります。

魏の側でもこの敗北の責任は問われるべきだという意見がありましたが、司馬師は自らの過失を認め「諸将に何の罪があろうか」と述べ、その度量によって人々の支持を受けました。こうして、戦いを経て双方に多くの教訓と影響を残したこの戦闘は、三国時代の歴史において重要な意味を持つ出来事となりました。

もう一度検索