松平定政

松平定政

松平定政（まつだいら さだまさ）は、江戸時代前期の大名で、三河国刈谷藩の初代藩主です。官位は従五位下・能登守。

生涯

松平定政は、松平定勝の六男として生まれました。寛永10年（1633年）に従五位下・能登守に叙任され、寛永12年（1635年）には長島城7000石を与えられました。慶安2年（1649年）には刈谷城2万石を与えられ、大名に列しました。

慶安4年（1651年）、3代将軍・徳川家光が死去すると、定政は家光の後を追うように無断で東叡山寛永寺で出家し、能登入道不伯と号しました。彼は領地や居宅、諸道具を一切返上し、これらを旗本の救済に充てるように大目付に願い出ました。さらに、幕府の政治を批判する諷諫書を井伊直孝に提出しました。

この時、将軍職を継いだばかりの徳川家綱はまだ数え年10歳であり、幼い君主を戴いた幕府は、大名や旗本の言動に非常に神経質になっていました。幕閣は定政の行動を「狂気の沙汰」とみなし、彼の所領を没収し、永蟄居としました。定政は本家筋の次兄・松平定行に預けられ、定行の所領である松山東野に送られました。正室との間の子である次男の定知と三男の定清も同行し、2人の女子は正室とともに実家の永井家に帰されました。その後、家綱より給米2000俵を与えられ、生活には困らなかったとされています。

寛文12年（1672年）11月24日、定政は東野で63歳で亡くなりました。広禅院殿格岸不伯大居士と諡られ、松山祝谷常信寺に葬られました。

定政の死後、次男の定知は江戸に召し返されて1500石の旗本となり、三男の定清は廩米500俵の旗本となりましたが、後に子孫が途絶えました。庶長子の定澄は、本家である伊予国松山藩主・松平定直から1500俵を分知され、旗本寄合席に列しました。

事件の影響

定政の出家遁世事件は、当時の社会に大きな影響を与えました。事件直後に起きた慶安の変で、捕り方に囲まれて自決した由井正雪は、遺言の中で幕府の定政への対応を「忠義の志を欺く行為」と厳しく批判しています。

万治3年（1660年）には、定政の姪の婿にあたる堀田正信が突然幕府批判の上書を提出し、無断で領地に帰城するという事件が起こりました。この時も、老中松平信綱の「狂気の作法」という意見が通り、正信は所領没収と永蟄居処分を受けました。堀田正信の事件は、上書が残っていないため詳細は不明ですが、定政の出家遁世事件がその遠因になっていると指摘する歴史家もいます。

系譜

正室：永井尚政娘
男子：定知
男子：定清
（生母は諸説あり）
男子：定澄
（生母不明）
女子
女子：松平定員正室 - 松平定澄養女

脚注

外部リンク

* デジタル版 日本人名大辞典+Plus『松平定政』 - コトバンク

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