林瀚 (明)

林瀚（りん かん、1434年 - 1519年）は、明代中期に活躍した官僚であり、著名な学者でもありました。字は亨大、号は泉山と称し、その生涯を通じて学問と政治の両面で重要な役割を果たしました。本貫は福州府閩県にあります。

生い立ちと官僚としてのキャリア

林瀚は、撫州府知府を務めた林鏐（字は元美）の子として生まれました。1466年（成化2年）に科挙に合格し、進士となります。その後、翰林院庶吉士に任じられ、その才能を早くから認められました。1472年（成化8年）には翰林院編修へと昇進し、1477年（成化13年）には翰林院修撰の職に就きました。

1486年（成化22年）、林瀚は左春坊左諭徳に任命されましたが、まもなく職を辞して故郷に戻りました。しかし、その学識と経験が買われ、1488年（弘治元年）には『憲宗実録』編纂事業のために再び召し出され、弘治帝への経書講義では講官を務めるなど、その知識と見識は高く評価されました。

その後、1490年（弘治3年）には国子祭酒に転じ、1496年（弘治9年）には国子監の事務を管掌したまま礼部右侍郎に進みました。1499年（弘治12年）には吏部右侍郎、同年10月には吏部左侍郎と、着実に要職を歴任しました。

官僚としての苦難と復帰

1500年（弘治13年）には南京吏部尚書に任じられましたが、1504年（弘治17年）には御史の王献臣が逮捕され、儒士の孫伯堅らが縁故で中書舎人に任用されたことに反対し、上奏したことが弘治帝の怒りを買い、辞職を願い出ましたが許されませんでした。この一件は、林瀚が権力に屈せず、正義を貫く人物であったことを示しています。

1506年（正徳元年）4月、林瀚は南京兵部尚書に転じ、参賛機務を務めましたが、病を理由に帰休を求めました。しかし慰留され、当時の政治の乱れを憂い、南京の諸臣とともに時政十二事を上奏しました。しかし、1507年（正徳2年）2月、宦官の劉瑾に憎まれ、浙江布政司参政に左遷されてしまいます。その後、致仕しましたが、ほどなくして奸党と非難されました。

しかし、1510年（正徳5年）に劉瑾が処刑されると、林瀚は南京兵部尚書の官に戻され、名誉を回復しました。その後、再び致仕し、静かな晩年を送りました。

晩年と遺産

1519年（正徳14年）9月庚申、林瀚は86歳でその生涯を閉じました。死後、その功績を讃えられ、太子太保の位を追贈され、諡は文安と贈られました。その著書として『林文安公集』25巻が残されており、後世に彼の学問と思想を伝えています。

林瀚には9人の男子がおり、その中でも林庭㭿と林庭機が知られています。

林瀚は、明代の政治と文化に深く関わった人物であり、その生涯は、官僚としての責任感、学者としての知識、そして人間としての誠実さを示しています。彼の残した業績は、後世に大きな影響を与えました。

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