栗田禎子

栗田 禎子

栗田 禎子（くりた よしこ）は、1960年に生まれた日本の歴史学者です。現在、千葉大学文学部で教授として教鞭を執り、専門は中近東および北アフリカの近現代史に焦点を当てています。また、日本中東学会の会長を務めるなど、当該分野における日本の主要な研究者の一人として活動しています。

来歴と研究活動

栗田氏は、東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻で学業を修め、1990年に博士課程を単位取得退学しました。その後、1993年には同大学から博士（学術）の学位を取得しています。その博士論文は「近代スーダンにおける体制変動と民族形成」と題され、この研究成果は2001年に大月書店より書籍として刊行されています。

研究の基礎となるのは、長期間にわたる現地調査です。特に、1980年代から2000年代にかけて複数回、スーダンに滞在し、綿密なフィールドワークを実施しました。具体的には、1985年から1987年、1994年から1995年、そして2005年には、それぞれ長期にわたる滞在を通して、研究対象地域の歴史や社会構造に関する深い知見を獲得しました。

社会への関与

学術研究に加え、栗田氏は社会的な課題に対しても積極的に発言を行っています。2003年7月には、参議院外交防衛委員会の公聴会に専門家として招かれ、イラク特措法案（当時）について意見を述べました。その際、イラク戦争およびその後の米英による占領体制の国際的な正当性が見られない点を指摘し、占領軍の活動がイラク国民の抵抗を武力で抑圧することに他ならないとの見解から、自衛隊による後方支援に反対する立場を明確に示しました。

また、2013年11月8日には、特定の秘密の保護に関する法律案（当時）に反対する立場から、他の歴史学者17名と共に衆議院第2議員会館で緊急集会を開催しました。この集会において、同法案が中東地域における自衛隊の活動などに関する情報へのアクセスを困難にし、学術研究の発展を阻害する恐れがあることを具体的に論じました。

さらに、2023年4月21日には、政府が同年国会への提出を見送った日本学術会議法改正案についてコメントを発表しました。政府の決定を「大きな成果であり、民主主義や学問の自由を守るために声を上げた人々への感謝」に値すると歓迎する一方で、「法案を微修正して再び提出を目指すなど、同様の試みが続けられる可能性がある」と懸念を示し、国民に対して引き続き動向を注視するよう求めました。

著作

多岐にわたる著作活動を通じて、研究成果や社会への提言を行っています。

著書
『近代スーダンにおける体制変動と民族形成』（大月書店、2001年）
『中東革命のゆくえ : 現代史のなかの中東・世界・日本』（大月書店、2014年）

編著
『中東　多元的中東世界への序章』（大月書店、1999年）
『イスラーム地域の民衆運動と民主化』（私市正年との共編、東京大学出版会、2004年）
『中東と日本の針路　「安保法制」がもたらすもの』（長沢栄治との共編、大月書店、2016年）

訳書
W・S・ブラント『ハルツームのゴードン　同時代人の証言』（リブロポート「冒険の世界史」、1983年）

関連文献
* 『現代思想』2018年5月号 特集「パレスチナ―イスラエル問題」（青土社）に、「「いい土地ですから、前に進めてください」とバルフォアはロスチャイルドに言った」を寄稿しています。

その他の活動

学術団体における活動にも精力的に取り組んでいます。歴史学研究会では、1989年から1991年まで編集委員を、また2009年から2012年まで編集長を務めるなど、学会運営や研究交流にも貢献しました。

関連項目

研究テーマや関心領域に関連する事項として、アラブの春、非核の政府、マフディー戦争、サアド・ザグルール、イラク国際戦犯民衆法廷、特定の秘密の保護に関する法律に対する声明の一覧などが挙げられます。

栗田禎子氏は、スーダン研究をはじめとする中近東・北アフリカ近現代史の専門家として深い学術的探求を続ける一方で、国内外の社会問題に対して歴史学の視点から積極的に意見を表明し、研究の自由や民主主義の重要性を訴えるなど、幅広い活動を展開しています。

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