桂川原の戦い

桂川原の戦い：細川高国と晴元の激突と堺公方の誕生

大永7年2月12日（1527年3月14日）の夜から13日にかけて、京都・桂川原周辺で繰り広げられた桂川原の戦いは、室町幕府後期の権力争いを象徴する出来事でした。この戦いは、細川高国と細川晴元という、当時の有力武将同士の対立が激化し、最終的に堺公方誕生という歴史的転換点をもたらしたのです。

戦いの発端：八上・神尾山両城の戦い

戦いの発端は、大永6年（1526年）に遡ります。管領・細川高国の家臣であった香西元盛が、同族の細川尹賢の讒言により自害に追い込まれたのです。これに対し、香西元盛の弟である波多野元清と柳本賢治は、高国への反旗を翻し、丹波国の八上城と神尾山城を拠点に抵抗を開始しました。

高国は、細川尹賢を総大将とする軍勢を神尾山城に、そして他の武将を八上城に派遣して包囲網を築きました。しかし、丹波守護代の内藤国貞や黒井城の赤井五郎らの支援もあり、包囲網は崩壊。八上城・神尾山城の包囲軍は撤退を余儀なくされました。

摂津諸城の落城と京都への進軍

この動きを察知した細川晴元は、三好長家、三好政長らに命じて阿波国から堺へ上陸。中嶋の堀城を占領しました。一方、高国は若狭守護の武田元光に援軍を要請しましたが、六角定頼や赤松政村ら他勢力は参戦せず、高国を孤立させる形となりました。

波多野元清勢力は、丹波から摂津へと進軍を開始。野田城、山崎城などを次々と陥落させ、高槻城に逃れた摂津守護代・薬師寺国長を追い詰めていきました。芥川城、太田城、茨木城、安威城、福井城、三宅城といった摂津国の諸城も、攻略または降伏を余儀なくされ、晴元・波多野連合軍の勢いは増していきました。

桂川原での激突

大永7年2月11日、波多野軍と三好軍は山崎城で合流、翌12日には桂川を挟んで高国軍と対峙しました。高国軍は、鳥羽から鷺の森まで桂川沿いに陣を張り、将軍・足利義晴が本陣を構え、武田元光軍が後詰として配置されていました。六角定頼は被官の一部を派遣したものの、本隊は北白川に留まり、消極的な姿勢を示しました。これは、晴元との縁談を進めていた可能性が示唆されています。

夜半から始まった戦闘は、翌13日、三好軍による武田軍への奇襲攻撃へと発展しました。武田軍は大きな損害を受け敗走し、高国も救援に向かいましたが、日野内光や荒木父子といった有力武将を失い、撤退を余儀なくされました。この戦いで、高国軍は壊滅的な打撃を受けました。

戦後と堺公方

2月14日、高国は義晴を奉じて坂本に逃亡しました。この逃亡によって、京都幕府は事実上崩壊しました。この事態は、後に堺公方の誕生という新たな政治体制の成立につながる重要な出来事となりました。一方、武田元光は若狭に退き、六角定頼は高国から晴元に鞍替えするなど、勢力図は大きく変化しました。2月16日には、柳本・三好連合軍が京都に進軍し、治安維持と宣撫工作に乗り出しました。

桂川原の戦いは、細川高国勢力の衰退、細川晴元勢力の台頭、そして堺公方誕生という、室町幕府後期の政治状況を大きく変えた重要な合戦でした。様々な勢力の思惑が複雑に絡み合い、戦国の世へと向かう大きな転換点となったのです。

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