桒原家

桒原家：栄華と没落の物語

桒原家（くわはらけ）は、名門の菅原氏をルーツとする五条家の庶流に属する家系です。歴史の舞台において、公家、華族、そして平民という異なる身分を経験しました。公家としては半家の家格を有し、華族となった後は子爵の位に叙せられました。しかし、その歴史は栄華とは程遠く、数々の苦難と悲劇に彩られています。

家系の始まりは、江戸時代前期に活躍した五条為庸の四男、桒原長義に遡ります。長義は権中納言・式部大輔にまで上り詰め、桒原家の極官となりました。家業は紀伝道でした。しかしながら、江戸時代の家禄はわずか30石。当時の公家の中でも屈指の貧困を極める家系として知られており、経済的な困窮は常に桒原家を悩ませました。その窮状は、当主が従者との口論の末、殺害してしまうという悲劇的な事件にまで発展しています。

明治維新後、公家と大名家が統合され華族制度が成立すると、桒原家も公家として華族に列せられました。明治17年（1884年）、華族令の施行により華族が五爵制になると、大納言を歴任した例のない旧堂上家であったことを理由に、子爵位を授けられました。しかし、経済的な問題は依然として解消されず、家計の窮乏は続き、品位を保つことすら困難な状況が続きました。

大正8年（1919年）、当主の桒原孝長が人妻を射殺するという重大な事件を起こします。この事件により、孝長は爵位を返上せざるを得なくなり、無期懲役の判決を受けました。孝長は昭和2年（1927年）に獄中で病死し、ここに桒原家の歴史は終焉を迎えたのです。

桒原家の歴史は、華麗な家系図の裏側にある、貧困と悲劇に満ちた物語です。権力と富を背景にした華族の世界において、その虚実を垣間見ることができる、興味深い事例と言えます。彼らの苦難の歴史は、近代日本の華族社会の光と影を映し出す鏡と言えるでしょう。

系譜:

（系図はテキストでは表現できません。参考文献に挙げた書籍等をご参照ください。）

参考文献:

浅見雅男『華族誕生 名誉と体面の明治』リブロポート、1994年
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社、2006年
橋本政宣編『公家事典』吉川弘文館、2010年
霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成』上巻、霞会館、1996年
近藤敏喬編『宮廷公家系図集覧』東京堂出版、1994年

関連項目:

菅原氏
五条家 (菅原氏)
清岡家
* 半家 (公家)

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