梅本竜

梅本竜：ゲーム音楽界の巨星、その生涯と音楽

梅本竜（うめもと りゅう、1974年2月18日 - 2011年8月16日）は、神奈川県横浜市出身のゲームミュージック作曲家です。1990年代から主にパソコンゲームのサウンドトラックを数多く手がけ、商業音楽家としての地位を確立しました。晩年はコンシューマーゲームのサウンドトラックや、オリジナル・サウンドトラックのアレンジャーとしても活動の幅を広げました。

生い立ちとキャリア

1992年から1993年までファミリーソフトに在籍後、フリーランスとしてシーズウェアやエルフなどのプロジェクトに参加。2007年から2008年までD4エンタープライズに在籍し、その後アートディンクの元社員らが設立したThinkRidge社のサウンドセクション部門に所属し、活動を続けました。2008年にはヨナオケイシ、せんたろらと共に「Spin→Out」を結成し、KORG DS-10を使ったイベントに多数出演しました。

ケイブ製作のゲーム音楽を中心に活動した晩年、2010年末には旧友の浅田誠が製作総指揮を務めた『インスタントブレイン』の作曲に着手します。しかし、2011年2月頃から体調を崩し、同年8月16日に37歳という若さで亡くなりました。遺作となった『インスタントブレイン』の完成を見ることは叶いませんでした。

音楽性：FM音源へのこだわり

梅本竜は、活動初期から主にゲームミュージックを手がけ、FM音源を使いこなすことで知られています。特にPC-9801シリーズにおけるOPN系のYM2203やYM2608、X68000シリーズにおけるOPM系のYM2151を得意としていました。ゲームクリエイターの菅野ひろゆきとタッグを組んで制作された『DESIRE 背徳の螺旋』『EVE burst error』『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』は、サウンドトラックCDが再発売されたり、ゲーム発売から十年以上経て新たなアレンジを加えたCDがリリースされるなど、現在でも高く評価されています。

チップチューンが主流だった1990年代の活動初期から、音源を自由に組み合わせられるようになった現在に至るまで、FM音源に対する強いこだわりを持ち続けました。2009年リリースのゲーム『コントラスタ』では、FM音源をベースにPCM音源などを重ねることで楽曲を制作。2008年にEGG MUSICで発売された『DESIRE 背徳の螺旋』のサウンドトラックでは、当時のOPN系FM音源をそのまま録音した音源に加え、「FM音源があと一歩進化していたらどうなっていたか」という仮定に基づき、仮想FM音源「YM-2609」を制作し、楽曲のリアレンジを行いました。

仮想FM音源「YM-2609」

「仮想FM音源YM-2609」は、PC-9801シリーズに搭載されたFM音源の進化を追うように作られています。FM音源のチャンネル数を増やし、SSGのデューティ比を可変にすることで、サウンド面を進化させました。これにより、アナログシンセサイザーでの音声合成のようなテクニックも応用可能になり、SSGのデューティ比を変え複数の音をユニゾンさせることで、シンセストリングスのようなサウンドを出すことも可能になりました。この仮想音源は『DESIRE 背徳の螺旋』のサウンドトラックのみならず、他のプロジェクトでも使用されました。

作曲環境

1999年頃、作曲環境をWindowsに移してからは、ACIDとMMLコンパイラの『テキスト音楽「サクラ」』を愛用していました。サクラに関しては、開発者のクジラ飛行机と共に開発合宿を行ったり、開発に深く関わっていました。サクラのサンプルにも楽曲を提供しています。

主要作品

DESIRE 背徳の螺旋
EVE burst error
この世の果てで恋を唄う少女YU-NO
野々村病院の人々
* 赤い刀

梅本竜の音楽は、その独特な音色と美しいメロディで、多くのゲームファンを魅了し続けています。彼の早すぎる死は惜しまれますが、その作品は今も色あせることなく、ゲーム音楽史に輝き続けています。

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