榎並城

榎並城（えなみじょう）

榎並城は、摂津国東生郡榎並荘、現在の大阪府大阪市城東区野江付近に位置していた日本の城です。別名を十七箇所城（じゅうななかしょじょう）とも呼ばれていました。この名は、城の東側に存在した室町幕府の料所、河内十七箇所に由来します。

概要

榎並城は、江口の戦いで8ヶ月間もの籠城に耐えた堅城として知られていますが、その城郭については不明な点が多く残されています。築城された場所は、茨田堤の築造によって陸地化した場所で、平安時代には榎並荘という荘園が成立していました。地域の南側は旧大和川と旧淀川の合流地点にあたり、周囲は氾濫原や低湿地が広がっていました。そのため、野江水神社付近のわずかな高台に築かれたのではないかと考えられています。

しかし、元禄17年（1704年）に始まった大和川の付け替え工事によって地形が大きく変化し、正確な場所の特定は困難になっています。

『万松院殿穴太記』には、「此城は元来も宗三が館なれば、究竟（きゅうきょう）の要害を拵（こさ）へ、日来は子息衛門大夫政勝を籠置たり」という記述があります。ここでいう宗三とは三好政長のことで、衛門大夫政勝は政長の息子である三好政勝（宗渭）を指します。この記述から、榎並城は強固な城郭であったと推察されています。

沿革

榎並城の歴史は、大きく分けて楠木時代、三好時代、石山本願寺時代の3つに分類できます。

楠木時代

榎並の地が歴史に登場するのは、南北朝時代の争乱期です。北朝に寝返った楠木正儀が応安2年（1369年）3月、天王寺から榎並に退いて陣を敷いたという記録が残っています（『花宮三代記』）。この時の陣所がどこであったかは定かではありませんが、『日本城郭大系』では、地勢から野江水神社周辺であったと推測しています。ただし、この時の陣所が後の強固な城郭に繋がっていたかどうかは不明です。

三好時代

城としての明確な記述が見られるのは、天文17年（1548年）10月28日のことです。この時、三好長慶方が榎並城を攻め、後に摂津各地で放火が起こりました（『細川両家記』）。これが、城としての文献上の初見となります。江口の戦いの始まりは、この10月28日の記述ではないかと考えられています。その後、三好政長は江口城で討ち死にし、三好政勝も父の死をきっかけに瓦林城に逃れました。廃城時期については記録が残っていないため不明ですが、その後の文献に登場しないことから、この時に廃城になったと考えられています。

石山本願寺時代

榎並城が廃城になった後、この城跡は石山本願寺によって再利用されたと推定されています。石山合戦の際に51の支城が築かれましたが、『陰徳太平記』によると、その中に「野江」という名前が見られます。このことから、「野江城、野江砦は榎並城跡を再利用したものであり、その位置は野江水神社付近が最も有力である」と指摘されています。

野江水神社

この地は度々大きな水害に見舞われていましたが、榎並城の築城中に水害が発生し、その鎮めのために三好政長が守護神として城内に社を建てたのが野江水神社の始まりと言われています。この時の社の位置が現在の社殿の位置であるとされているため、野江水神社を含めた部分が城郭であったと推察されています。また、豊臣秀吉も大坂城を築城する際に社殿を修築し、国家泰平を祈願したという伝承が残っています。

城跡へのアクセス

電車でのアクセス
Osaka Metro谷町線「野江内代駅」から徒歩約5分
車でのアクセス
阪神高速12号守口線「城北出口」
近隣に駐車場はありません（野江水神社に参拝者用の駐車場が1,2台あります）。

脚注

参考文献

「大和川の付替え」 大和川付替え300周年。
『城東区史』城東区史編纂委員会、1974年7月20日、440-441頁。
平井聖ほか『日本城郭大系 第12巻 大阪・兵庫』新人物往来社、1981年3月、163-164頁。
「榎並城残影。 野江水神社」『大阪人』、大阪市都市工学情報センター、2009年2月1日、34-37頁。

関連項目

日本の城一覧
三好政権
大阪市立榎並小学校
舎利寺の戦い
城北村 (大阪府)、城北公園、城北川、城北筋、城北公園通、城北公園通駅 - いずれも榎並城（の北）に由来する名称。

外部リンク

大和川付替え300周年ホームページ
榎並猿楽発祥の地・榎並城跡伝承地の碑/大阪市城東区公式ホームページ
野江水神社の公式ホームページ
野江水神社/大阪市城東区公式ホームページ

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