構内無線局

構内無線局とは

構内無線局は、特定の場所、例えば工場やオフィスビルなどの「構内」でのみ使用が許可されている無線局の一種です。この無線局は、電波法によって厳格に定義されており、その利用範囲や技術的な要件が細かく定められています。

定義

電波法では、構内無線局は「構内無線業務を行う無線局」と定義されています。ここでいう「構内無線業務」とは、「一の構内において行われる無線通信業務」を指します。つまり、ある特定の敷地や建物内でのみ電波を使用する無線通信が、構内無線業務にあたります。

概要

構内無線局は、主に以下のような用途で利用されます。

テレメータ: 遠隔地にある計測器などのデータを収集する。
テレコントロール: 遠隔地にある機器などを操作・制御する。
データ伝送: データの送受信を行う。
RFID（無線識別）: 電子タグを利用した物品管理や個体識別。
無線電力伝送: ワイヤレスで電力を伝送する。

これらの用途に使用される構内無線局は、工場敷地内やビル内など、特定の「構内」でのみ使用が許可されています。公共の道路や移動中の車両など、構内を越えて電波を使用することは認められていません。もし、構内を越えて電波を使用する必要がある場合は、陸上移動局や特定小電力無線局などの別の種類の無線局を利用する必要があります。

構内無線局の具体的な用途、電波の型式、周波数、空中線電力については、電波法施行規則に基づく告示によって詳細に規定されています。

種類

構内無線局には、使用する電波の周波数帯や用途によって複数の種類があります。電波法施行規則や無線設備規則に基づき、用途、電波型式、周波数、空中線電力などが細かく定められています。以下は、その一部です。

2.4GHz帯: 移動体識別用無線設備などに利用されます。
1200MHz帯: テレメータ、テレコントロール、データ伝送などに利用されます。
920MHz帯: 移動体識別用無線設備などに利用されます。

これらの周波数帯は、他の無線局や他の業務、ISMバンドなどと共用されているため、混信が発生する可能性があります。そのため、構内無線局は他の無線局に比べて優先度が低く設定されている場合もあります。

標準規格

構内無線局の技術基準は、電波産業会（ARIB）によって規格化されており、標準規格として公開されています。

RCR STD-1: 構内無線局2.4GHz帯移動体識別用無線設備
RCR STD-5: 構内無線局1,200MHz帯テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備
ARIB STD-T106: 構内無線局 陸上移動局 920MHz帯移動体識別用無線設備

これらの規格には、使用する周波数帯やチャネル番号などが詳細に定められています。

免許・登録

構内無線局の免許・登録には、いくつかのルールがあります。

免許局: 電波法に基づく免許が必要な無線局です。原則として、技術基準適合証明を受けた適合表示無線設備を使用する必要があります。適合表示無線設備以外の機器を使用する場合は、予備免許を取得し、落成検査に合格する必要があります。また、無線従事者も必要となる場合があります。
登録局: 電波法に基づく登録が必要な無線局です。登録局は、必ず適合表示無線設備を使用する必要があります。

免許・登録の有効期間は、免許・登録の日から5年間です。

免許の単位

916.7～920.9MHzの移動体識別用無線局については、複数の送信設備が機能上一体となって一つの通信系を構成する場合は、それらをまとめて単一の無線局として申請することができます。ここでいう「機能上一体となって一の通信系を構成する」とは、一つの構内における同一のネットワークにおいて、個々の送信設備が無線局の目的を達成するために一体となって運用される状態を指します。

表示

適合表示無線設備には、技術基準適合証明を受けたことを示すマークが表示されています。以前は、楕円形や円形のマークが使用されていましたが、現在は技適マークが使用されています。また、技術基準適合証明番号や工事設計認証番号の表示も必須となっています。

旧技術基準の機器の使用

電波法の技術基準改正により、旧技術基準に基づいた無線設備の新規免許はできません。また、使用期限も定められていましたが、コロナ禍の影響により、当分の間延期されています。対象となるのは、

平成17年11月30日までに認証された適合表示無線設備
経過措置として、平成19年11月30日までに認証された適合表示無線設備

主にテレメーター、テレコントロール、データ伝送用、移動体識別用の2,450MHz帯免許局が該当します。

操作

適合表示無線設備を使用する構内無線局については、無線設備の外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさない技術操作であれば、無線従事者は不要です。

検査

適合表示無線設備を使用する構内無線局は、落成検査や定期検査、変更検査は基本的に行われません。

沿革

構内無線局の歴史は古く、1986年に電波法施行規則に定義されました。当初は400MHz帯と2,450MHz帯のみが割り当てられていましたが、その後、1,200MHz帯や19GHz帯などが追加されました。2000年には400MHz帯が廃止され、特定小電力無線局として扱われるようになり、2002年にはワイヤレスカードシステムが廃止されました。また、周波数帯の再編や技術基準の改正により、現在に至っています。

周波数の変遷

構内無線局に割り当てられてきた周波数帯は、時代とともに変化してきました。

13560kHz: ワイヤレスカードシステムに使用されていましたが、現在は廃止されています。
400MHz帯: テレメータ、テレコントロール、データ伝送などに使用されていましたが、現在は廃止されています。
950MHz帯: 移動体識別用に使用されていましたが、現在は廃止されています。
19GHz帯: 高速データ伝送用に使用されていましたが、現在は廃止されています。


現在利用されている主な周波数帯は以下の通りです

2.4GHz帯: 移動体識別や無線電力伝送などに利用されています。
1200MHz帯: テレメータ、テレコントロール、データ伝送などに利用されています。
920MHz帯: 移動体識別や無線電力伝送などに利用されています。
5.7GHz帯: 無線電力伝送に利用されています

電波利用料

構内無線局の電波利用料は、「移動する無線局」として扱われ、電波法別表第6第1項の規定が適用されます。

廃止された構内無線局

過去には、様々な周波数帯で構内無線局が運用されていましたが、技術の進歩や周波数帯の再編により廃止されたものもあります。詳細については、本文をご参照ください。

まとめ

構内無線局は、特定の場所でのみ利用できる便利な無線システムです。技術の進歩とともに、その利用範囲や用途は拡大しており、産業分野において重要な役割を果たしています。今後も、様々な技術革新によって、構内無線局の可能性はさらに広がっていくと考えられます。

関連項目

無線局
陸上移動局
特定小電力無線局

外部リンク

920MHz帯の無線局の利用
RFID（電波による個体識別）の申請

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