樺山忠副

樺山忠副（かばやま ただそえ）は、戦国時代の薩摩国（現在の鹿児島県）において、島津氏に仕えた武将です。天文6年（1537年）に、島津氏の庶流である樺山氏の8代目当主、樺山善久の嫡男として誕生しました。母は島津忠良の次女で、島津貴久の姉にあたる御隅です。幼名は千代鍋丸、通称は太郎または助太郎と称しました。

天文19年（1550年）、祖父である島津忠良の加冠により元服を果たし、武士としての第一歩を踏み出しました。その後、天文23年（1554年）には、岩剣城の戦いに参加し、初陣を飾ります。しかし、弘治3年（1557年）、蒲生氏や菱刈氏との戦い（纒頭の戦い）において、敵陣を攻め破る際に手負いとなり、その傷がもとで同日、21歳という若さでこの世を去りました。法名は華巌弓木上座とされています。

樺山忠副の死を悼み、島津義久は彼の死を深く悲しみ、多くの和歌を詠んでいます。その中には、弥陀の六字（なむあみだぶ）を頭文字にした歌も含まれており、彼の死を嘆き悲しむ様子がうかがえます。これらの歌は、『三国名勝図会』に収録されています。


情有りてかたぢも人にことなるを　さきだてて見るあなう世の中
むかひては中々かなしそれとのみ　筆にとめおく人の名残りは
あやなくも歎な詫そたらちねを　おくらすたぐひこころ有世を
峯の雲浦に塩やく煙にも　見し面影のたちやそふふらむ
たかき名を残すはさすがうれしきも　はかなやわきて武士の道
吹風のさそひし花の陰ならて　かかる夢をも見る世なりけり


また、母である御隅は、忠副の死を深く悲しみ、出家して尼となり、朝夕欠かさず供養の念仏を続けたと伝えられています。


樺山忠副の生涯は短く、わずか21年でしたが、その武勇と人柄は多くの人々に記憶され、島津氏の歴史に名を刻みました。彼の死は、島津氏にとって大きな痛手であり、その後の戦国時代の動向に少なからぬ影響を与えたと考えられています。


参考文献

『本藩人物誌』 鹿児島県史料集（13）（鹿児島県史料刊行委員会）
桐野作人 『さつま人国誌 戦国・近世編 2 』（南日本新聞社 2013年）ISBN 978-4-86074-206-5

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