樺山善久

樺山善久（かばやま よしひさ）

生涯

樺山善久は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、薩摩国守護大名であった島津氏の一族、樺山氏の8代目当主です。樺山氏は、島津宗家4代当主・忠宗の子である資久を祖とする家系で、日向国樺山を領したことからその名が起こりました。

永正10年（1513年）、樺山広久の子として生まれた善久は、島津宗家に仕え、島津忠良の次女・御隅を正室としました。武将としての才能だけでなく、和歌や蹴鞠にも造詣が深く、近衛稙家から古今伝授を受け、飛鳥井雅綱に蹴鞠を学んだとされています。その教養の高さが伺えます。

天文8年（1539年）の湯田口合戦では、島津貴久に従い出陣。負傷しながらも敵将・小野左近を討ち取るという武功を挙げ、その功績により、大隅国向島郷（後の桜島）の松浦と二俣を賜りました。後に藤野へと領地を移しています。この戦での活躍は、善久の武将としての力量を示すエピソードと言えるでしょう。

天文17年（1548年）には、本田氏が領内で起こした争乱鎮圧のため、島津忠良の命を受け、自ら家臣を率いて出陣。清水城を攻略しました。この時、城から逃亡した本田薫親が残した歌に対し、善久が返歌を詠み、それを矢に結びつけて放ったという逸話は、彼の教養と機知に富んだ人柄を物語っています。このエピソードは、島津義久からも褒められることとなりました。

永禄5年（1562年）には、北原氏の旧臣である白坂下総介の北原家再興の願いを、主君・島津貴久に取り次ぐなど、外交的な役割も担いました。元亀元年（1570年）には、小浜、堅利の代わりとして横川に移り住んでいます。天正11年（1583年）には、義久が病に倒れた際、日向国高岡の法華嶽薬師寺に17日間籠り、平癒を祈願して百首の和歌を詠みました。主君への忠誠心と、和歌に対する情熱が伝わります。

文禄元年（1592年）の文禄・慶長の役では、老齢のため出陣が許されなかったことに憤慨し、「君か為 名のため取りし 梓弓 八十余りの 身こそつらけれ」という歌を詠んでいます。この歌には、晩年になっても衰えない武将としての気概が込められていると言えるでしょう。

文禄4年（1595年）、83歳で生涯を閉じました。長男の忠副は、弘治3年（1557年）に戦死したため、次男の忠助が家督を継ぎました。

樺山善久は、武将としての卓越した能力と、和歌や蹴鞠に通じた教養人としての側面を持ち合わせ、戦国時代の激動の中でその生涯を全うしました。彼の人生は、多くの逸話とともに後世に語り継がれています。

参考文献

『本藩人物誌』 鹿児島県史料集（13）（鹿児島県史料刊行委員会）
『鹿児島県史 別巻』（鹿児島県）

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