橋本欣五郎

橋本欣五郎の生涯

橋本欣五郎（はしもと きんごろう、1890年2月19日 - 1957年6月29日）は、昭和時代の日本における特徴的な陸軍軍人及び政治家です。彼は右翼活動家として知られ、通称「ハシキン」と呼ばれました。数度のクーデターを試みましたが、いずれも成功せず、戦後は東京裁判でA級戦犯として起訴されました。

来歴

岡山県岡山市に生まれ、7歳で福岡県門司市へ移った橋本は、陸軍に関心を抱き、高等小学校から進学し、熊本陸軍地方幼年学校に入学。その後、陸軍士官学校、第32期で卒業し、さらには陸軍大学校に進みました。
ここで彼は、トルコ公使館付武官としてムスタファ・ケマル・パシャの革命思想に触れ、「革命」を趣味とするようになりました。この経験が彼の思想や行動に深い影響を与えました。

1930年には、参謀本部のロシア班長に任命され、密かに桜会を結成。この組織は、三月事件や十月事件を企てましたが、いずれも失敗に終わります。

1936年の二・二六事件では，昭和天皇と決起部隊の仲介を試みましたが、天皇の命令で事件は鎮圧され、橋本は責任を問われることになります。その後、日中戦争が勃発し、再召集されるも、南京攻略戦での事件で非難を受け、陸軍砲兵大佐として退役しました。

その後、政治活動に転身し、大日本青年党を組織。1942年の翼賛選挙で衆議院議員に当選し、翼賛政治会の総務に就任しましたが、戦後は公職追放となりました。彼は1945年に衆議院議員の職を辞し、極東国際軍事裁判で終身刑を宣告されました。しかし、仮釈放後も彼の国家改革への野心は衰えず、1956年の参議院選挙に無所属で立候補しましたが、落選しました。

1957年6月29日、肺癌により67歳で亡くなりました。彼の晩年には、結婚した3度目の妻が臨終間際に離婚を申し出て去っていきました。葬儀は、過去に彼を支援した徳川義親が取り仕切りました。

人物像と性格

橋本欣五郎は、知人によれば非常に短気でヒステリックな性格であったと伝えられています。軍の現役時代には60回以上の懲罰を受けたと言われ、極東国際軍事裁判でもしばしば激昂する姿が見られました。特に、法廷では白鳥敏夫に激しく暴力を振るったこともありました。

また、石原広一郎からは、A級戦犯の中でも利己的で不平を口にする小人物と評されています。裁判中、アメリカ人弁護人を受け入れることも拒否したことで、彼の強固な姿勢がうかがえます。

一方で、橋本は詩の才能にも恵まれていました。彼は、ある朝鮮人男性の依頼で女性の詩を書くエピソードがあり、その出来事は彼の詩的センスを示すものとして語られています。

橋本大佐の手記と評価

橋本の記録が残されている「橋本大佐の手記」は、彼の視点から三月事件、十月事件、満州事変に関する詳細な内容が記されています。これらは彼自身の体験や思考を反映した重要な文書です。

橋本欣五郎の生涯は、彼が抱いた野心や矛盾、そして戦の激動の中での出来事が交錯するものであり、一人の右翼活動家としての歩みを通じて日本の歴史の一端を成していることが理解されます。彼の存在は、戦前・戦中の日本の軍人や政治家の生き様を知る上で欠かせない要素となっています。

もう一度検索