二十二史箚記

『二十二史箚記』について

『二十二史箚記』（にじゅうにしさっき）は、清代の学者、趙翼によって著された重要な歴史書です。清代の文献に特有の編纂スタイルを用い、主に中国の正史である「二十二史」についての考証や論評を行っています。この書物は36巻からプラス補遺1巻まで構成されており、1795年の自序を始めとして、1800年に銭大昕などが序文を寄せています。別名「廿二史箚記」としても知られています。

概要と目的

本書が書かれた背景には、趙翼の家に多くの蔵書がないことから、比較的アクセスしやすい正史に絞り込んで考察を行ったという事情があります。趙翼は、経学の難解さに対して、歴史書は比較的親しみやすいと認識し、その中でも互いに矛盾する記載や興味深い事柄を比較しながら探求し、それらの知見を一つの書にまとめることにしました。実際には、様々な蛮族の記録を含む『新唐書』や『新五代史』までを含む24史に触れていますが、当時の趙翼にとって、これらはまだ正史には含まれていなかったため、「二十二史」とされています。

内容の深さと限界

自序に記載されているように、著書は単なる事例の異同を論じるだけでなく、各歴史書の編纂の経緯や筆法、各時代の政治情勢やその変遷についても言及しています。全体で約500件の項目があり、歴史的な事実や経緯を基に詳細な考察がなされています。しかし、考証の精緻さにおいては、同時代の有名な考証学者である王鳴盛や銭大昕と比較されると、若干の評価の違いがあるとされています。

特に、正史以外の書籍からの引用を原則的に避けているため、著者はあくまで正史に基づいた考証を行っています。それでも、歴代の正史に関する簡潔で有用なガイドとしての役割を果たしており、特に日本においては関心を持たれています。

日本での受容

日本では、頼山陽が定めた序文が付された和刻本が出版されており、彼はその序文で歴代正史を読まずとも本書から基本的な理解が得られると述べています。このことから、日本国内では正史の概要を把握するための書籍として位置づけられています。

構成

本書は、各巻ごとに論じられている正史の内容を以下に示します：

• - 巻1-3: 史記、漢書
• - 巻4-5: 後[[漢書]]
• - 巻6: 三国志
• - 巻7: 三国志、晋書
• - 巻8: 晋書
• - 巻9: 宋書、南斉書、梁書、陳書
• - 巻10-12: 同上及び南史
• - 巻13-15: 魏書、北斉書、周書、隋書、北史
• - 巻16-20: 旧唐書、新唐書
• - 巻21-22: 五代史
• - 巻23: 宋史、遼史、金史
• - 巻24-26: 宋史
• - 巻27: 遼史、金史
• - 巻28: 金史
• - 巻29-30: 元史
• - 巻31-36: 明史

補遺

巻末には、趙翼の編纂に参加した『御批歴代通鑑輯覧』の際の記録として、遼代・金代・元代に関する人名、地名、官職名の訂正などが収められています。

入手可能性

日本では、1930年に国民文庫刊行会から『続国訳漢文大成』として日本語訳版が発行され、1958年には復刻版が出されていますが、現在ではこれらの書籍の入手は非常に困難です。

関連書籍

本書に関する研究としては、『十七史商榷』や『二十二史考異』、さらには考証学に関連する文献が存在しています。

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